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[受賞予想] 作品賞-アカデミー賞愛の精神から「英国王」に◎

アカデミー賞 記事:2011.02.27

ソーシャル・ネットワーク

英国王のスピーチ

インセプション

ブラック・スワン

ザ・ファイター

トイ・ストーリー3

Winter’s Bone

トゥルー・グリット

127 Hours

キッズ・オールライト

最初に抜け出したのは「英国王のスピーチ」だった
この部門、まず最初に抜け出したのは「英国王のスピーチ」だった。9月に発表されたオスカー登竜門トロント国際映画祭で観客賞を受賞。過去にも「アメリカン・ビューティー」「スラムドッグ$ミリオネア」らが発掘されている最重要映画祭での受賞で一気にオスカー戦線のフロントランナーに躍り出た。

しかし、12月に入り前哨戦シーズンが開幕すると、「ソーシャル・ネットワーク」の恐るべき独走劇が始まる。ほとんどの批評家賞を総なめし、重要3賞のうち 2つ(ブロードキャスト批評家賞、ゴールデン・グローブ賞)を制した。この時点で「ソーシャル・ネットワーク」のオスカー受賞を疑う者は皆無だっただろう。ところが、ここから「英国王のスピーチ」の快進撃が始まった。悪名高き勝負師、ハーヴェイ・ワインスタインのオスカー・キャンペーンの成果が一気に花開いたのだ。

ワインスタインのしたたかな戦略
ワインスタインのしたたかな戦略は、BoxOfficeに顕著だ。「トゥルー・グリット」「ブラック・スワン」が年末に拡大公開して興収を積み重ねていくのに対し、「英国王のスピーチ」はもどかしいまでのスロー興行。少しずつ、少しずつ上映館数を増やし、不振にあえぐ前哨戦シーズンを我慢の子で乗り切った。そして、その我慢はついに実を結ぶ。重要3賞の最後、PGA(製作者組合賞)で見事作品賞を受賞したのだ。これはオスカー・ウォッチャーたちにとってもまさに青天の霹靂だった。九分九厘「ソーシャル~」で決まっていたと思っていたところに、この大逆転だ。それでもまだ、どこかPGA受賞をフロック視する向きもあった。ところが、続くDGA(監督組合賞)でもトム・フーパーが大本命デヴィッド・フィンチャーを逆転してしまったのだ。これでいよいよ「英国王」の勢いは本物だと誰もが確信。追って発表された英アカデミー賞での勝利がそれを裏付けることになる。

「英国王」と「ソーシャル」、興行戦略で決定的な差が?
ワインスタインの戦略は簡潔だった。「英国王のスピーチ」を万人受けするドラマとして売り出すことに血道を上げたのだ。そのために、劇中のFワードをカットしたPGレイティングバージョンの製作まで行った。結果、「英国王のスピーチ」は低年齢層にも人気のある幅広い層に受ける人気作に化けた。興行にもその効果はくっきりと現れており、授賞式前に興収は1億ドルを突破。作品賞を受賞すればもう5000万ドルは軽く上乗せできるだろう。
一方の「ソーシャル・ネットワーク」は、9月に封切られると最初の週末だけで2000万ドル以上を稼ぐロケットスタート。「英国王のスピーチ」とは対照的なハリウッドスタイルの興行で派手に飛び出した。しかし、その後前哨戦シーズンで栄冠を積み重ねていく頃には劇場上映も終了し、再公開も大きな成果を上げられなかった。ワインスタインがアカデミー賞のスケジュールに合わせて「英国王のスピーチ」の興行を逆算したのに対し、「ソーシャル・ネットワーク」は前哨戦シーズンまっただ中にDVDリリースをもってくる戦略。結果的にはワインスタインの戦略が功を奏した形となった。

アカデミー賞の原点回帰
いわゆる”アカデミー賞向き”というワードは、ここ数年意味をなくしていた。アカデミー賞は、批評家好みする作品よりも一般受けする映画を好む傾向を意味していたものの、近年は批評家好みする小粒な作品が相次いで結果を出し、ついには昨年、映画ファンの代表格たる「アバター」を差し置いて、興業的には見向きもされなかった批評家代表の小品「ハート・ロッカー」が受賞してしまった。”アカデミー賞向き”という言葉に何の意味もなくなった瞬間だった。

ところが今年、その言葉が意味を取り戻しつつある。「英国王のスピーチ」は紛れもなく”アカデミー賞向き”の作品だ。逆に「ソーシャル・ネットワーク」は、アカデミー会員には理解できない類のいわゆる”Critics Darling(批評家の恋人)”。ここ数年の流れなら、批評家好みする「ソーシャル・ネットワーク」がそのまま受賞しておかしくなかった。ただ今年の流れは違う。”アカデミー賞向き”作品が明らかに復権しつつある。思うに、昨年の「ハート・ロッカー」受賞をさすがにやりすぎたと反省したアカデミー会員たちの反動があるのではないだろうか。昨年の授賞式直後に当サイトにポストした記事 『「ハート・ロッカー」受賞が落としたアカデミー賞の暗い陰』にも書いたが、昨年の結果はアカデミー賞がアカデミー賞たる所以を放棄するのと同じことだった。”アカデミー賞らしさ”を取り戻さんとする動きが、「英国王のスピーチ」擁立につながったという推測は、それほど外れてはいないはずだ。

個人的には昨年の結果に大いに不満があるので、今年「英国王のスピーチ」が受賞することで、欠点は多いが愛すべきアカデミー賞が戻ってくるのであれば嬉しい限り。「ソーシャル・ネットワーク」も作品として大好きだが、アカデミー賞愛の精神から「英国王のスピーチ」受賞を応援したい。

管理人の予想
◎英国王のスピーチ(ワインスタイン・カンパニー)
○ソーシャル・ネットワーク(コロンビア)


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