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【第84回アカデミー賞 受賞予想】 外国語映画賞は「別離」大本命も番狂わせあり?

アカデミー賞 記事:2012.02.27

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外国語映画賞
闇を生きる男(監督:Michael R. Roskam/ベルギー)
ぼくたちのムッシュ・ラザール(監督:Philippe Falardeau/カナダ)
別離(監督: アスガー・ファルハディ/イラン)
Footnote(監督:ヨセフ・シダー/イスラエル)
In Darkness(監督:アニエスカ・ホランド/ポーランド)

予想に入る前に、候補作品を簡単に解説しておこう。

■ 闇を生きる男(監督:Michael R. Roskam/ベルギー)
ある田舎町で畜産業を営むジャッキーは、期せずして精肉業者との不法な取引に手を染めるが、この取引を捜査していた警官が殺されたことで、ジャッキーの過去や秘密が暴かれていくことになる。昨年の東京国際映画祭で上映された問題作。

■ ぼくたちのムッシュ・ラザール(監督:Philippe Falardeau/カナダ)
モントリオールのある小学校。担任の先生の死に動揺する子供たちの前に風変わりな代用教員が現れ、彼らの心を癒していく。アルバトロス・フィルム、ザジフィルムズの配給で今夏日本公開予定。昨年、同部門にノミネートされたカナダ映画「灼熱の魂」と同じプロデューサーによる作品。

■ 別離(監督: アスガー・ファルハディ/イラン)
離婚の危機を迎えた夫婦。寝たきりの父の看病に若い妊婦ラジエーを雇ったナデルだったが、ラジエーのある過失を責めて突き飛ばした拍子に、彼女を流産させてしまう―。世界中で激賞され、40以上の映画賞に輝いたイラン映画の金字塔。ゴールデン・グローブ賞でも外国語映画賞を受賞。

■ Footnote(監督:ヨセフ・シダー/イスラエル)
宗教学を研究する父と子の間に突如訪れる軋轢。研究者としてはすっかり存在感を失っている父のもとに、ある日研究の功績を称える賞の受賞の知らせが届く。しかしそれは本来息子に送られるはずの知らせだったため、2人の間に隠れていたしこりが表面化していく。発表した作品すべてが外国語映画賞イスラエル代表に選ばれているヨセフ・シダー監督が描く悲劇。

■ ソハの地下水道(監督:アニエスカ・ホランド/ポーランド)
ナチス占領下のポーランド。地下水道で働いていた男ソハは、ある日ゲットーからトンネルを掘って逃げてきたユダヤ人たちと遭遇し、彼らをかくまうことにする。「僕を愛したふたつの国/ヨーロッパ ヨーロッパ」でアカデミー賞脚色賞にノミネートされた実績を持つポーランドの女流監督アニエスカ・ホランドが描く第二次世界大戦の傷痕。アルバトロス・フィルム、クロックワークスの配給で今年9月に日本公開予定。

前哨戦で圧倒的な強さを見せた「別離」の受賞は堅いというのが大方の予想だが、外国語映画賞はサプライズのおきやすい部門だけに何が起きるかわからない。昨年こそ本命視されていた「未来を生きる君たちへ」が順当に受賞したが、06年の受賞作「善き人のためのソナタ」(本命は「パンズ・ラビリンス」)、07年の「ヒトラーの贋札」(本命は「ボーフォート -レバノンからの撤退-」)08年「おくりびと(本命は「戦場でワルツを」)、09年「瞳の奥の秘密」(本命は「白いリボン」)と、4年連続で番狂わせを演出してきた。

「別離」の前哨戦圧勝具合は06年の「パンズ・ラビリンス」を彷彿とさせるが、それだけでは受賞確実とは言い切れないのがこの部門の怖いところだ。

同部門の傾向としては、とにかくナチスをモチーフにした作品が好まれやすい。近年だけでも、98年「ライフ・イズ・ビューティフル」、02年「名もなきアフリカの地で」、07年「ヒトラーの贋札」などが受賞しており、候補作も含めれば多数のタイトルが並ぶ。今年も「ソハの地下水道」がナチスをモチーフにした作品で、大本命逆転の可能性を秘めているといえる。

また一方で、候補作に悲劇要素の濃い作品が揃うと、救いのある作品が受賞するケースも少なくない。08年の「おくりびと」はまさにこのケースで、今年でいえばカナダ代表の「ぼくたちのムッシュ・ラザール」が該当する。

「別離」にとって有利な傾向は、その国独自の文化や問題が色濃く反映された映画が強いというものだ。前述「おくりびと」は言うまでもなく、黒人差別が残る南アフリカのスラム街を舞台とした05年の「ツォツィ」、ボスニア紛争の最前線を描いた「ノー・マンズ・ランド」、中国の文化が美しく描かれた「グリーン・デスティニー」など。「別離」もまたイラン独自の問題が悲劇の根底に巣食う作品だけに、この傾向にぴたりとはまる。

番狂わせの可能性は少なからずあるが、それでも今年は「別離」が受賞するだろう。監督のアスガー・ファルハディはゴールデン・グローブ賞授賞式にてイラン国民の善良性を訴える熱烈なスピーチを行った。アカデミー賞授賞式でも重要なメッセージが発信されるに違いない。

◎ 別離(監督: アスガー・ファルハディ/イラン)


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