第93回アカデミー賞全部門ノミネーション予想

※◯がノミネート予想
※並びは前哨戦実績順

作品賞
parasite ノマドランド(サーチライト・ピクチャーズ) ◯
作品・監督・主演女優・脚色・撮影(5部門)
marriagestory プロミシング・ヤング・ウーマン(フォーカス・フィーチャーズ) ◯
作品・監督・主演女優・脚本(4部門)
once ミナリ(A24) ◯
作品・監督・主演男優・助演女優・脚本(5部門)
irishtman シカゴ7裁判(Netflix) ◯
作品・助演男優・脚本・編集・録音・音響編集(6部門)
1917 サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ(アマゾン・スタジオ)
主演男優・録音・音響編集(3部門)
jojo First Cow(A24)
joker あの夜、マイアミで(アマゾン・スタジオ) ◯
作品・監督・助演男優・脚色・主題歌(5部門)
littlewomen Mank マンク(Netflix) ◯
作品・監督・脚本・撮影・編集・美術・衣装・作曲・録音・音響編集(10部門)
knivesout マ・レイニーのブラックボトム(Netflix)
主演男優・主演女優・脚色・美術・衣装(5部門)
farewell ザ・ファイブ・ブラッズ(Netflix)
撮影(1部門)
uncutgems Judas and the Black Messiah(HBO Max) ◯
作品・助演男優・主題歌(3部門)
dolemite ソウルフル・ワールド(Disney)
作曲・視覚効果・長編アニメ(3部門)
fordvsferrari 続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画(アマゾン・スタジオ)
助演女優・メイク(2部門)
portrait Never Rarely Sometimes Always(フォーカス・フィーチャーズ)
twopopes ファーザー(ソニー・ピクチャーズ・クラシックス) ◯
作品・主演男優・助演女優・脚色・編集(5部門)
rocketman この茫漠たる荒野で(Netflix) ◯
作品・助演女優・撮影・作曲(4部門)
考察 映画comコラムをご参照ください。

監督賞
parasite クロエ・ジャオ(ノマドランド) ◯
irishman エメラルド・フェネル(プロミシング・ヤング・ウーマン) ◯
dir_once レジーナ・キング(あの夜、マイアミで) ◯
1917 デヴィッド・フィンチャー(Mank マンク) ◯
marriagestory リー・アイザック・チャン(ミナリ) ◯
littlewomen アーロン・ソーキン(シカゴ7裁判)
jojo ケリー・ライヒャルト(First Cow)
uncutgems スパイク・リー(ザ・ファイブ・ブラッズ)
joker ダリウス・マーダー(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)
portrait フローリアン・ゼレール(ファーザー)
farewell エリザ・ヒットマン(Never Rarely Sometimes Always)
farewell トマス・ヴィンターベア(Another Round)
考察① 今年最大の注目が集まるといってもいい監督賞部門。なぜなら、アカデミー賞史上はじめて複数の女性監督がノミネートされる可能性が高いからだ。これまで92年の歴史のなかで、この部門にノミネートされた女性はたったの5人。受賞したのは「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグローただひとりだ。
考察② 女性にとってはひときわ高い壁としてそびえ立ってきたこの監督賞部門だが、今年は女性が主役となって男性監督たちを圧倒している。受賞争いでも大本命と目されているクロエ・ジャオ(ノマドランド)のノミネートは100%間違いないが、前哨戦実績で2番手につけたエメラルド・フェネル(プロミシング・ヤング・ウーマン)もよほどのことがないかぎり落選することはないだろう。
考察③ というわけで、すでに史上初となる複数女性のノミネートはほぼ確実なのだが、続く前哨戦実績3番手もなんと女性監督なのだから、今年はおそろしく層が厚い。そのレジーナ・キング(あの夜、マイアミで)は女優としてすでにオスカー受賞実績があり、いまハリウッドでもっとも売れっ子のひとりと言っていい存在。「あの夜、マイアミで」は作品賞部門でノミネートされるかされないか…の当落線上だが、監督賞部門ではキングの候補は可能性が高いと見ていい。
考察④ ノミネートの可能性がある女性監督はまだまだいる。作品賞部門での前哨戦実績は上位に位置する「First Cow」を手がけたのも女性監督のケリー・ライヒャルトだ。昨年オスカーを制したポン・ジュノ監督も絶賛しており、同業者や批評家からの支持が厚い。作品の浸透度がいまひとつなのが気がかりだが、こと作品の評価という点ではノミネートの資格は十分にある。
考察⑤ エリザ・ヒットマン(Never Rarely Sometimes Always)も前哨戦で注目された女性監督のひとり。意図せぬ妊娠という事態に毅然と対応する10代女性の姿を描いた対象作で高い評価を得た。
考察⑥ 男性監督でもっともノミネートの可能性が高いのは、デヴィッド・フィンチャー(Mank マンク)、リー・アイザック・チョン(ミナリ)、アーロン・ソーキン(シカゴ7裁判)の3人。うち1人落ちるとすれば、脚本賞部門に票が回りそうなアーロン・ソーキンか。
考察⑦ これまで数年に一度のペースで国際長編映画賞(旧外国語映画賞)で有力視される作品の監督がノミネートされており、ここにもマークが必要だ。今年該当するのは「Another Round」のトマス・ヴィンターベア。ドグマ映画「セレブレーション」や「偽りなき者」で世界的な評価を獲得し、アカデミー会員の間でも知名度は高いはずで、逆転候補の可能性はある。

主演男優賞
marriagestory チャドウィック・ボーズマン(マ・レイニーのブラックボトム) ◯
joker リズ・アーメド(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ) ◯
uncutgems アンソニー・ホプキンス(ファーザー) ◯
painandglory デルロイ・リンドー(ザ・ファイブ・ブラッズ)
onceupon スティーヴン・ユァン(ミナリ) ◯
rocketman ゲイリー・オールドマン(Mank マンク)
dolemite キングズリー・ベン=アディル(あの夜、マイアミで)
fordvsferrari トム・ハンクス(この茫漠たる荒野で)
irishman サシャ・バロン・コーエン(続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画)
fordvsferrari マッツ・ミケルセン(Another Round) ◯
考察① 主演男優賞部門でノミネートされる可能性があるコンテンダーは、実質すでに前哨戦実績の上位6人=BIG 6に絞られていると言える。激しい受賞争いを繰り広げるチャドウィック・ボーズマン(マ・レイニーのブラックボトム)とリズ・アーメド(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)のノミネートは確実として、残り3つの席を7人が争う構図だ。
考察② 4人の中ではアンソニー・ホプキンス(ファーザー)が頭ひとつ抜けている。すでに受賞歴のある大ベテランだが、齢83にして“キャリアベストの演技”という評価も聞こえてくるほどで、もしかすると2度目の受賞もあるかもしれない。昨年も「2人のローマ教皇」で助演男優部門にノミネートされているホプキンス、80歳を超えて2年連続で演技賞にノミネートとなれば、史上初の快挙となる。
考察③ 前哨戦序盤では強い存在感を放っていたデルロイ・リンドー(ザ・ファイブ・ブラッズ)だが、後半戦に入ってやや失速。重要前哨戦であるアメリカ俳優組合賞とゴールデングローブ賞で候補から漏れたのは大きなマイナス材料だ。
考察④ 人気ドラマ「ウォーキング・デッド」でキャリアを開花させた韓国系アメリカ人スティーヴン・ユァン(ミナリ)にとっては、2度目の大きなチャンス到来となる。一昨年、イ・チャンドン監督による韓国映画「バーニング 劇場版」でも助演男優賞部門で有力視されたが、惜しくも落選。ダイバーシティ(多様性)をテーマに掲げるアカデミー協会からすれば、アジア系のユァンはぜひとも最終ノミニーに残ってほしい人材というのが本音ではないか。
考察⑤ 3年前に「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」で主演男優賞を射止めたゲイリー・オールドマンも3度目の候補を狙う。対象作「Mank マンク」では実在した脚本家ハーマン・J・マンキウィッツを演じているが、“実在の人物”を演じていることはアカデミー賞において有利な条件のひとつ。BIG 6の中で唯一この条件に合致していることが有利に働くのは間違いない。
考察⑥ BIG 6以外では、キングズリー・ベン=アディル(あの夜、マイアミで)に一発逆転の可能性がある。有名舞台劇の映画化で演じたマルコムXは、力強いカリスマの裏に繊細な人間味を感じさせ、アディルの才能を予見させるには十分すぎるほどだった。ただ、この映画は4人の主役級人物が交差するアンサンブル劇で、他3人との票割れのリスクがあるため推しづらいというのも事実だ。
考察⑦ 外国語映画枠からマッツ・ミケルセン(Another Round)もプッシュ。「ファンタスティック・ビースト」シリーズでジョニー・デップの代役に選ばれるなどハリウッドでも大活躍の国際俳優は、まだオスカーノミネート経験がない。北米内の前哨戦ではほとんど名前が挙がっていないものの、作品が国際長編映画賞部門で本命視されていることもあり、大逆転候補の可能性はある。

主演女優賞
us キャリー・マリガン(プロミシング・ヤング・ウーマン) ◯
marriage フランシス・マクドーマンド(ノマドランド) ◯
judy< ヴィオラ・デイヴィス(マ・レイニーのブラックボトム) ◯
farewell ヴァネッサ・カービー(私というパズル)
bombshell シドニー・フラニガン(Never Rarely Sometimes Always)
littlewomen アンドラ・デイ(The United States vs. Billie Holiday) ◯
harriet ジェシー・バックリー(もう終わりにしよう。)
diane ロザムンド・パイク(I Care a Lot)
knivesout エリザベス・モス(透明人間)
hersmell エイミー・アダムス(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌) ◯
考察① 前哨戦実績上位の4人は、最重要視される前哨戦であるアメリカ俳優組合賞、ゴールデングローブ賞、ブロードキャスト映画批評家協会賞の3つ全てでノミネートされており、実績に申し分なし。この4人が他コンテンダーを置き去りにして先頭集団を形成しているというのが、大方の予想と言えそう。
考察② ただ、この上位4人のなかで紛れがあるとすれば、ヴァネッサ・カービー(私というパズル)か。ヴェネチア国際映画祭で女優賞も受賞しているので、むしろ他よりも実績上位という見方もできるが、他の3人が対象作が作品賞部門でも有力視されているのに比べると、見劣りするのは否めない。
考察③ 逆転候補の筆頭はアンドラ・デイ(The United States vs. Bille Holiday)。ゴールデングローブ賞ドラマ部門の主演女優賞を受賞して大きな注目を集めた。歌手として活躍する彼女が演じたのは、自身の歌唱スタイルにも多大な影響を与えたと公言してきたビリー・ホリデイ。自慢の歌唱力を武器に伝説のシンガー役を熱演している。昨年、ジュディ・ガーランド役を演じて主演女優賞を受賞したレニー・ゼルウィガー(ジュディ 虹の彼方に)を例に挙げるまでもなく、実在のシンガー役はアカデミー会員の大好物。作品の認知度が低いのが不安材料だが、ゴールデングローブ賞での勝利はその不利を埋めて余りある効果を発揮するだろう。
考察④ 同じく、ゴールデングローブ賞コメディ/ミュージカル部門の主演女優賞を制したロザムンド・パイク(I Care a Lot)にも注目が集まる。実は前哨戦ではまったくと言っていいほど名前が上がっていなかったパイクだが、ゴールデングローブ賞受賞で一躍有力コンテンダーとして認知されることとなった。高齢者を食い物にする冷徹な詐欺師という強烈な役柄で、「ゴーン・ガール」以来2度目のオスカー候補を狙う。
考察⑤ もう1人、どうしても名前を挙げておかなくてはいけないのがエイミー・アダムス(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌)だ。オスカー候補の常連ながらいまだ受賞がないのが不思議なアダムスだが、アカデミー会員からの寵愛が厚いのは誰の目にも明らか。今回の対象作はとても残念な評価にさらされているにもかかわらず、アダムスは最重要視される前哨戦であるアメリカ俳優組合賞にノミネートされている。実際、アダムスの演技はさすがの一言だが、果たして作品賞評判の悪さを覆すことはできるのか。

助演男優賞
onceupon ポール・レイシー(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)
irishman サシャ・バロン・コーエン(シカゴ7裁判) ◯
abeautiful レスリー・オドム・ジュニア(あの夜、マイアミで) ◯
irishman ダニエル・カルーヤ(Judas and the Black Messiah) ◯
lighthouse チャドウィック・ボーズマン(ザ・ファイブ・ブラッズ)
twopopes ビル・マーレイ(オン・ザ・ロック) ◯
parasite ジャレッド・レト(The Little Things) ◯
honeyboy デヴィッド・ストラザーン(ノマドランド)
justmercy マーク・ライランス(シカゴ7裁判)
dolemite フランク・ランジェラ(シカゴ7裁判)
考察① 前哨戦で最上位の実績を残しているポール・レイシー(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)が、アカデミー賞ではノミネート落ちするかもしれない。各地の批評家協会賞では圧倒的な強さを見せているレイシーだが、最重要前哨戦であるアメリカ俳優組合賞とゴールデングローブ賞ではノミネートすらされず。長いキャリアを誇るベテランながら、大きな舞台で注目を浴びるのは今回がほぼ初めてと言ってよく、知名度という点では明らかに他コンテンダーに見劣りするのが大きな懸念材料。この劣勢をはね返して見事オスカー候補を勝ち取ることができるのか、要注目だ。
考察② そのレイシーに前哨戦実績で次ぐのがサシャ・バロン・コーエン(シカゴ7裁判)。今年は「続・ボラット」での活躍もあり、インパクトでは他コンテンダーを圧倒している。対象作で演じたアビー・ホフマンは過激かつ挑発的なユーモアを武器に体制と戦った活動家で、そのスタイルがコーエンその人とシンクロしているのも注目を集める理由のひとつだ。
考察③ レスリー・オドム・ジュニアが「あの夜、マイアミで」で演じるのは、若くしてこの世を去った伝説のシンガー、サム・クック。劇中では重要な場面で美しい歌声を披露し、さらに主題歌賞部門で本命視されるオリジナル楽曲“Speak Now”も熱唱している。ズバ抜けた歌唱力はしばしアカデミー賞で強力な武器となるだけに、
考察④ ゴールデングローブ賞を制したことで受賞争いでもトップに上り詰めた感のあるダニエル・カルーヤ(Judas and the Black Messiah)。「ゲット・アウト」で主演男優賞にノミネートされた後も着実にキャリアを重ねており、弱冠32歳の若手ながらオスカー像を手にしても何ら不思議はない。
考察⑤ 取捨が難しいのがチャドウィック・ボーズマン(ザ・ファイブ・ブラッズ)。主演男優賞部門でのノミネートは堅いと思われるので、そちらに票が集中する可能性が高い。「ザ・ファイブ・ブラッズ」で演じる役柄は印象的ではあるものの、出番自体は決して多くなく、演技的な見せ場という意味では「マ・レイニーのブラックボトム」に大きく及ばない。
考察⑥ そろそろオスカー像をあげたい俳優のひとり、ビル・マーレイ(オン・ザ・ロック)だが、今回もノミネート当落線上ギリギリの位置にいる。ゴールデングローブ賞、ブロードキャスト批評家賞ではきっちりとノミネートされたが、最重要である俳優組合賞で候補落ちしたのは痛い。
考察⑦ その俳優組合賞でマーレイを押しのけて候補入りしたのがジャレッド・レト(Little Things)。すでに受賞経験があるが、癖の強い役がハマったら大きな力を発揮する俳優だ。今回も連続殺人鬼役とあってインパクトは十分。不評だった「スーサイド・スクワッド」ジョーカー役の汚名を返上できるか。
考察⑧ 作品が有力で出番もわりと多いデヴィッド・ストラザーン(ノマドランド)もチャンス十分。「グッドナイト&グッドラック」に続くノミネートを獲得するには、作品の支持者による票が不可欠だ。
考察⑨ 「シカゴ7裁判」はコーエンだけでなく、複数の候補者を輩出する可能性がある。その筆頭はマーク・ライランス。「ブリッジ・オブ・スパイ」で本命スタローンを破ってオスカー受賞を果たしたベテランは、その後すっかりハリウッドでおなじみのバイプレイヤーとして定着している。「フロスト×ニクソン」でオスカー候補のフランク・ランジェラも負けていない。そのコワモテで映画においては悪役となる判事を憎々しく演じている。

助演女優賞
marriagestory ユン・ヨジョン(ミナリ) ◯
hustlers マリア・バカローヴァ(続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画) ◯
littlewomen アマンダ・サイフリッド(Mank マンク)
bombshell オリヴィア・コールマン(ファーザー) ◯
jojo エレン・バースティン(私というパズル)
farewell グレン・クローズ(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌) ◯
richardjewell ヘレナ・ツェンゲル(この茫漠たる荒野で) ◯
thereport ジョディ・フォスター(The Mauritanian)
bombshell オリヴィア・クック(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)
dolemite トニ・コレット(もう終わりにしよう。)
onceupon タリア・ライダー(Never Rarely Sometimes Always)
考察① 最大の注目は韓国人女優ユン・ヨジョン(ミナリ)が史上初めてオスカー演技賞を韓国に持ち帰ることができるのかどうか。前哨戦では堂々の実績No.1とあってノミネートまでは問題なさそうだが、受賞争いではマリア・バカローヴァ(続・ボラット)が強力なライバルとして立ちはだかる。
考察② 実績3番手のアマンダ・サイフリッドだが、ノミネートは決して安泰ではなく、むしろ危ういのではないかと予想する。最重要視される俳優組合賞で候補落ちしたのがその根拠で、同じ俳優仲間からの支持が薄いことはアカデミー賞においては致命傷となる。どちらかといえばその美貌を活かした役柄の多かった女優がファム・ファタール的な役柄を演じて評価されるという筋書きは、「L.A.コンフィデンシャル」でオスカーを受賞したキム・ベイシンガーの事例と重なる。まだ35歳と若いが、すでに知名度も抜群の活躍ぶりだけに順当なノミネートを願うが果たして。
考察③ 「ファーザー」のオリヴィア・コールマンは、一昨年に「女王陛下のお気に入り」で主演女優賞を射止めたばかりだが、その授賞式で見せた愛嬌たっぷりのスピーチがアカデミー会員のハートを鷲掴みにした。そもそも、事前に行われたゴールデングローブ賞でのこれまたユーモアたっぷりな受賞スピーチがアカデミー賞の得票につながったのでは?と思わせるほどで、つまり、コールマンは人間的な魅力にあふれていて会員の支持が厚い。今回も前哨戦実績だけならノミネート確実とは言い切れないが、会員からの寵愛をプラスに変えて、まずノミネートまでは確実に獲得しそうだ。
考察④ ベテラン組からはエレン・バースティン(私というパズル)、グレン・クローズ(ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌)の2人が候補入りを狙う。ただ、どちらも対象作品が弱いのがマイナス材料。「私というパズル」は評価は高けれど知名度に欠け、「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」は知名度は高けれど評価が伴っていない。どちらもNetflix配信で会員がすぐに視聴できるという強みを活かしたい。ちなみにクローズは一昨年、主演女優賞部門で本命視されながらオリヴィア・コールマンに受賞をさらわれている。もし2人同時にノミネートとなれば、一昨年の因縁再びとなるが…。
考察⑤ 逆に若手の新星はヘレナ・ツェンゲル(この茫漠たる荒野で)。ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した映画『システム・クラッシャー 家に帰りたい』で彗星のごとく現れたドイツ出身の弱冠12歳の少女が、オスカー2度受賞の共演者トム・ハンクスに一歩も引かない堂々たる演技を見せた。元来、助演女優賞部門は子役にやさしい傾向があり、ツェンゲルの逆転ノミネートがあってもおかしくない。
考察⑥ ゴールデングローブ賞でサプライズ受賞を果たしたジョディ・フォスター(The Mauritanian)も圏内。それ以外の前哨戦実績はパッとしないが、長いキャリアと抜群の知名度を武器に逆転候補を狙う。

脚本賞
プロミシング・ヤング・ウーマン ◯
シカゴ7裁判 ◯
ミナリ ◯
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
Never Rarely Sometimes Always
Mank マンク ◯
パーム・スプリングス ◯
Judas and the Black Messiah
ソウルフル・ワールド
ザ・ファイブ・ブラッズ
40歳の解釈:ラダの場合
Driveways
オン・ザ・ロック
ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから
考察
前哨戦実績上位3作品まではノミネート当確と見てよさそう。それぞれ作品も、脚本家も個性ある面々で今から受賞争いが楽しみなメンツが揃った。残り2つの席をめぐる争いは熾烈だが、最有力は「Mank マンク」だろう。ハリウッド映画製作の内幕を描くという同業者にとって無視の出来ない内容はもとより、デヴィッド・フィンチャーの亡き父ジャックが遺した脚本という話題性も得票を助けることになりそうだ。ちなみに映画の題材となった「市民ケーン」は、映画史に残る傑作と評されながら、アカデミー賞では脚本賞のみの受賞にとどまっている。「Mank マンク」も同じ運命をたどる可能性も…?
最大の惑星は「パーム・スプリングス」。昨年のサンダンス映画祭で史上最高額で売買された話題の映画で、同じ1日を繰り返す主人公の奮闘がコメディタッチで描かれる。そのユニークなストーリーテリングが評価の源となっているだけに、脚本賞部門で多くの票を集めることになりそうだ。
アニメ映画「ソウルフル・ワールド」にもチャンスあり。共同脚本を務めたケンプ・パワーズは今年、「あの夜、マイアミで」で脚色賞とダブルノミネートされる可能性もある。「カールじいさんの空飛ぶ家」「レミーのおいしいレストラン」「インサイド・ヘッド」など、ピクサー作品はこの部門の常連だけに、今回も抜群の高評価を獲得した本作がノミネートされる可能性は低くない。

脚色賞
ノマドランド ◯
あの夜、マイアミで ◯
もう終わりにしよう。 ◯
マ・レイニーのブラックボトム ◯
First Cow
ファーザー ◯
この茫漠たる荒野で
続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画
ザ・ホワイトタイガー
これからの人生
Emma.
Shirley
考察
上位2作品のノミネートは確実だが、残りは何が起きてもおかしくない。主要前哨戦(脚本家組合賞、ゴールデングローブ賞、ブロードキャスト批評家賞)では評価が割れており、なんと3つ全てでノミネートされている作品は1つもない。※脚本家組合賞にエントリーしていない作品がいくつかあり。実績3番手の「もう終わりにしよう。」は、「エターナル・サンシャイン」でオスカー受賞実績のあるチャーリー・カウフマン脚本。作品の評価も高いが、万人受けする内容ではないだけに不安は残る。
その点、原作の戯曲を華麗に再現した「マ・レイニーのブラックボトム」は、メッセージがストレートに伝わるわかりやすさと、膨大な量のセリフからなる物語構成が有利に働くかもしれない。ちなみに脚本を書いたルーベン・サンチャゴ=ハドソンは「アメリカン・ギャングスター」や「グローリー/明日への行進」にも出演した俳優で、今回が長編映画としては初の脚本となる。
フランスの舞台劇を英語化した「ファーザー」も大きなチャンス。原作に惚れ込んだオスカー受賞脚本家クリストファー・ハンプトン(危険な関係、つぐない)が自ら脚色を名乗り出て、フロリアン・ゼラール監督と共同で映画用の脚本を書き上げた。アンソニー・ホプキンス演じる認知症を患った男の生活を、主人公の主観で描くというユニークな設定に説得力をもたせた脚本は高く評価されて然るべきだ。

撮影賞
ノマドランド ◯
Mank マンク ◯
TENET テネット ◯
この茫漠たる荒野で ◯
ザ・ファイブ・ブラッズ ◯
First Cow
シカゴ7裁判
チェリー
ミッドナイト・スカイ
ヴァスト・オブ・ナイト
ミナリ
あの夜、マイアミで
考察
前哨戦実績上位の「ノマドランド」「Mank マンク」はノミネート当確ライン。まったくタイプの違う2本だが、本番では受賞争いを繰り広げることになりそう。
「TENET テネット」はアメリカ撮影監督組合賞でノミネート落ちしたのが気にかかるが、近年この部門は技術志向なところがあり、この作品はまさにトレンドどんぴしゃり。
「この茫漠たる荒野で」はため息が出るほど美しい撮影がドラマを一層際立てた。撮影のダリウス・ウォルスキーはこれまで「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズや一連のリドリー・スコット作品を担当してきたベテラン。これまでオスカー候補実績がないのが不思議で、今回初のノミネートは遅すぎるほどだ。
組合賞では「チェリー」「シカゴ7裁判」がノミネートされたが、オスカーでは「ザ・ファイブ・ブラッズ」が有利と予想。実は「チェリー」と「ザ・ファイブ・ブラッズ」を手がけたのは同じ人物=ニュートン・トーマス・サイジェル。これまで「ドライヴ」や「ボヘミアン・ラプソディ」などヒット作を担当してきたが、オスカー候補実績はなし。今年はこの2本の他にもNetflixの超絶アクション映画「タイラー・レイク -命の奪還-」も担当しており、まさに当たり年。票割れの危険もあるが、作品評価が最も高い「ザ・ファイブ・ブラッズ」に票が集まると予想する。

編集賞
シカゴ7裁判 ◯
ノマドランド
Mank マンク ◯
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ
ファーザー ◯
TENET テネット ◯
プロミシング・ヤング・ウーマン
ミナリ
パーム・スプリングス ◯
透明人間
続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画
I Care a Lot
オン・ザ・ロック
もう終わりにしよう。
あの夜、マイアミで
ザ・ファイブ・ブラッズ
考察
多大な情報量を整理整頓するだけでなく、説得力満載につなぎきった力技「シカゴ7裁判」が前哨戦で優位に立った。「Mank マンク」や「ファーザー」など時系列や物語構成が複雑で編集技術が問われる作品には票が集まりやすいが、一方で終始静謐なタッチの「ノマドランド」も前哨戦で上位にランクしている。
この部門では過去にも強さを見せているクリストファー・ノーラン監督作「TENET テネット」もノミネート資格は十分。毎年この部門にはBoxOfficeで大ヒットを飛ばした娯楽大作が1〜2本ノミネートされるが、今年その枠に当てはまるのはこの作品か「透明人間」しかない。「透明人間」も前哨戦で好成績を残しており、「TENET テネット」をさしおいてノミネートされる可能性はある。

美術賞
Mank マンク ◯
TENET テネット ◯
この茫漠たる荒野で
マ・レイニーのブラックボトム ◯
もう終わりにしよう。 ◯
ミッドナイト・スカイ ◯
ザ・プロム
プロミシング・ヤング・ウーマン
Emma.
ムーラン
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY
ザ・ファイブ・ブラッズ
シカゴ7裁判
どん底作家の人生に幸あれ!
考察
前哨戦で独走した「Mank マンク」のノミネートは堅い。受賞まで一気に走り抜けそうだ。
クリストファー・ノーラン監督作は美術賞部門でも強く、映像的な見せ場も満載の「TENET テネット」ならノミネートまでは問題なくクリアできるのではないか。
注目は「もう終わりにしよう。」。セットにさりげなく配置された小道具が物語の重要な役割を果たすなど、美術が担う役割が大きい。ビジュアル的にもとても魅力的でノミネートの資格は十分にある。
SF作品もこの部門では強い傾向にあるが、「ミッドナイト・スカイ」の美術はこれまでのSF作品とは一線を画したオリジナリティを感じさせたのが好材料。美術を担当したジム・ビッセルはキャリア初期に「E.T.」も手がけている大ベテラン。オスカー候補実績はまだ1度だけと過小評価されているだけに、2度目の候補を期待したい。

衣装デザイン賞
マ・レイニーのブラックボトム ◯
Emma. ◯
Mank マンク ◯
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY ◯
ムーラン ◯
あの夜、マイアミで
ワンダーウーマン 1984
プロミシング・ヤング・ウーマン
Judas and the Black Messiah
ドクター・ドリトル
ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト
ザ・ファイブ・ブラッズ
ザ・プロム
どん底作家の人生に幸あれ!
考察
美術賞部門とセットでノミネートされることも多いこの部門だが、今年セット候補の可能性があるのは「マ・レイニーのブラックボトム」「Emma.」「Mank マンク」などのいわゆるピリオド作品。時代考証に基づく当時の正確な再現が評価されやすく、この3作品はいずれも多くの票を獲得しそう。
一方、想像力を爆発させたファンタジー作品の代表格は「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY」。ファッションアイコン化した主人公の衣装を色彩も豊かに創造した手腕は高く評価されてしかるべきだ。
オリエンタルなデザインが西洋人のハートを刺激しそうな「ムーラン」も有力候補。ただし、作品自体は評価が伸びず、劇場公開の見送りや中国での炎上騒ぎなどもあり、決していいイメージを持たれていないのが大きなマイナス材料だ。

作曲賞
ソウルフル・ワールド ◯
Mank マンク ◯
TENET テネット ◯
ミッドナイト・スカイ ◯
ミナリ
この茫漠たる荒野で ◯
ザ・ファイブ・ブラッズ
アンモナイトの目覚め
透明人間
ザ・ライフルマン
ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト
これからの人生
The Little Things
ムーラン
シカゴ7裁判
考察
ショートリストに残った全15本のうち、何かしらの前哨戦で受賞またはノミネートされたのは7本。中でもダントツの強さを見せたのが「ソウルフル・ワールド」で、作曲を担当したのはすでに2度のオスカー受賞実績を持つトレント・レズナー&アティカス・ロスのコンビだ。デヴィッド・フィンチャー作品でおなじみのこのコンビ、当然「Mank マンク」の作曲も手がけていて、こちらも前哨戦で2番手の実績をおさめた。ということで、レズナー&ロスの黄金コンビが2作品でのノミネートを受けることはほぼ間違いないと見ていい。
「ブラックパンサー」で早々にオスカーを制した36歳の新星ルドウィグ・ゴランソンが2度目のノミネートに向けて死角なし。「TENET テネット」では、それまでクリストファー・ノーラン監督で作曲を担当してきたハンス・ジマーの代打として登板し、ジマーサウンドとは違う新しい風を持ち込んだ。作品の話題性も加味すればノミネートまでは問題なさそう。
常連アレクサンドル・デスプラ(ミッドナイト・スカイ)も前哨戦で4番手と好位置。作品評価は今ひとつだったが、すでに2度オスカー受賞の実績を誇る巨匠のスコアはさすがの存在感で、ノミネートの可能性は高い。
残る1席に推したいのは「この茫漠たる荒野で」。作曲を手がけたジェームズ・ニュートン・ハワードは「プリティ・ウーマン」「シックス・センス」「ハンガー・ゲーム」シリーズなどを手がけた巨匠だが、これまで8度のオスカー候補歴を持ちながら、まだ1度の受賞もない。30年以上の長きにわたり第一線で活躍してきた巨匠の初受賞はまだ先になりそうだが、少なくともノミネート獲得で望みをつなげたい。

主題歌賞
“Speak Now”(あの夜、マイアミで) ◯
“Seen”(これからの人生) ◯
“Fight for You”(Judas and the Black Messiah) ◯
“Turntables”(すべてをかけて:民主主義を守る戦い) ◯
”Husavik”(ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語) ◯
“Wuhan Flu”(続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画)
What You’ve Done”(Belly of the Beast)
“Never Break”(Giving Voice:内なる声が語ること)
“Make It Work”(ジングル・ジャングル 魔法のクリスマスギフト)
“Rain Song”(ミナリ)
“Show Me Your Soul”(Mr. Soul!)
“Loyal Brave True”(ムーラン)
“Free”(ゴリラのアイヴァン)
“Green”(サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ)
考察
前哨戦をリードした「あの夜、マイアミで」の主題歌”Speak Now”は、出演者のレスリー・オドム・ジュニアがエンドロールで力強く歌い上げるナンバー。今年のアカデミー賞を大きく左右するテーマのひとつである #BlackLivesMatter文脈では無視することのできない一曲だ。
ゴールデングローブ賞を受賞した“Seen”(これからの人生)は、イタリア映画ながらNetflixで全世界配信されていることが大きく有利に働くだろう。ノミネートまでは間違いないのではないか。
ウィル・フェレル主演のコメディー映画「ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語」からエントリーしている”Husavik”は、ふざけた作品のテイストからは想像も出来ない正統派の名曲。キャッチーなメロディーとノスタルジックな歌詞で涙腺を刺激するだけに、票は集まりやすいと予想する。

メイクアップ&ヘアスタイリング賞
マ・レイニーのブラックボトム ◯
ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌 ◯
Mank マンク
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY
プロミシング・ヤング・ウーマン
ビルとテッドの時空旅行 音楽で世界を救え!
ムーラン
続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画 ◯
ザ・プロム
考察
ファンタジー世界の特殊メイクよりも、現実世界の偉人を再現するようなメイクアップ術が重視されるのが近年の傾向だが、今年その路線で強そうなのが「マ・レイニーのブラックボトム」と「Mank マンク」の2本。特に前者はオスカー女優ヴィオラ・デイヴィスを迫力満点のメイクで大変身させ、実在した大物歌手を蘇らせている。
グレン・クローズを腰の曲がったおばあちゃんに、エイミー・アダムスを田舎の主婦にそれぞれ変身させた「ヒルビリー・エレジー 郷愁の哀歌」もインパクト大。誰もが知る大女優たちの変身ぶりを見れば、メイクの力を思い知ることうけあいだ。
サシャ・バロン・コーエンだけでなく、娘役のマリア・バカローヴァまでも大変身させている「続・ボラット」にも票が集まりそう。万人受けする作品ではないだけに、アカデミー会員のなかに作品の不支持層が多数を占めていないことを祈りばかりだ。

録音賞
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ ◯
この茫漠たる荒野で
グレイハウンド
ソウルフル・ワールド
Mank マンク ◯
シカゴ7裁判 ◯
ノマドランド
ミッドナイト・スカイ
ザ・プロム
TENET テネット ◯
ザ・ファイブ・ブラッズ
ワンダーウーマン 1984
透明人間 ◯
ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語
考察
通常はボックスオフィスを賑わせた予算が大きめの大作や臨場感たっぶりの戦争映画、ミュージカル映画などが優位に立つ部門だが、今年は劇場閉鎖の影響でそれらの作品数が絶対的に不足している。
目立つ大作と言えば「TENET テネット」「ワンダーウーマン 1984」あたりで、特に前者は音響編集賞も合わせて受賞争いでも主役を張れそうだ。大作ではないが、ボックスオフィスで大ヒットした「透明人間」にもチャンスあり。
ミュージカル映画は「ザ・プロム」の他に選択肢が見つからない。Netflix作品ということで劇場での臨場感を体験できないのは残念だが、ライバル手薄の今年ならチャンスありか。
「ソウルフル・ワールド」も前哨戦では強さを見せたが、ここ10年、アカデミー賞ではアニメ作品のノミネートはなし。それ以前は「レミーのおいしいレストラン」「ウォーリー」など連続ノミネートもあったのだが、傾向が変わってきている模様。

音響編集賞
サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ ◯
ミッドナイト・スカイ
TENET テネット ◯
Mank マンク ◯
ノマドランド
ザ・プロム
チェリー
グレイハウンド
この茫漠たる荒野で
ワンダーウーマン 1984
マ・レイニーのブラックボトム
シカゴ7裁判 ◯
透明人間 ◯
ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語
40歳の解釈:ラダの場合
ソウルフル・ワールド
考察
録音賞とノミネートが一致する確率が高く、ここ5年は必ず3〜4本が一致している。今年は特に大作も少なく選択肢が限られており、一致率はより高まる可能性がある。
比較的アクション度合いの高い作品がノミネートされる傾向にあるが、今年もっともその傾向に当てはまるのは「TENET テネット」。受賞争いでも最右翼で、ノミネート落ちすることはないだろう。
“音”がモチーフの「サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ」も当然圏内。音が聞こえなくなるとはどういうことか、を音響編集の技術で再現してみせる。

視覚効果賞
TENET テネット ◯
ミッドナイト・スカイ ◯
ムーラン
Mank マンク
ソウルフル・ワールド ◯
ブラッドショット
ハーレイ・クインの華麗なる覚醒/BIRDS OF PREY
ゴリラのアイヴァン ◯
Love and Monsters ◯
考察
ここ数年、この部門を賑わせてきたMCU作品も「スター・ウォーズ」シリーズも劇場公開されなかった今年は、例年に比べれば明らかに作品のスケールが一段小さい。スケール感から堂々たるノミネート資格があると断言できるのは「TENET テネット」くらいか。
ただ、予算の多寡に関係なく、目をみはるユニークな技術があればきちんと見いだされるのもこの部門のいいところ。2015年、低予算の「エクス・マキナ」が「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」や「オデッセイ」「マッドマックス 怒りのデス・ロード」を破って受賞を果たしている。今年、低予算ながらショートリストに残った「Love and Monsters」には要注目だ。
アニメ作品のノミネートは滅多にないが、2016年に「KUBO/クボ 二本の弦の秘密」が候補入りを果たしている。評価の高いアニメならチャンスがないわけではなく、「ソウルフル・ワールド」にも可能性があるかもしれない。

国際長編映画賞
parasite Another Round(デンマーク) ◯
painandglory ラ・ヨローナ 彷徨う女(グアテマラ) ◯
atlantics Collective(ルーマニア) ◯
lesmiserables Two of Us(フランス) ◯
truceandjustice Night of the Kings(コートジボワール) ◯
beanpole そして俺は、ここにいない。(メキシコ)
paintedbird 老人スパイ(チリ)
corpuschristi ひとつの太陽(台湾)
thosewho 親愛なる同志たちへ(ロシア)
honeyland Quo vadis, Aida?(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)
honeyland Charlatan(チェコ)
honeyland 少年の君(香港)
honeyland Sun Children(イラン)
honeyland Hope(ノルウェー)
honeyland 皮膚を売った男(チュニジア)
考察① 前哨戦で他を突き放しているのがデンマークの「Another Round」。傑作「偽りなき者」のトマス・ヴィンターベア監督×マッツ・ミケルセン主演のドラマで、“血中アルコール濃度0.5%の状態を保つと人生うまくいく”という噂を実践しようとする男たちの姿を描く。前哨戦実績および監督・主演俳優の知名度の高さからして、この部門の大本命と見ていい。
考察② 前哨戦で2番手につけたグアテマラの「ラ・ヨローナ 彷徨う女」は現地の怪奇伝説を社会派スリラーとして描く異色作。もしノミネートとなれば、グアテマラにとっては史上初の快挙となる。
考察③ ルーマニアのドキュメンタリー映画「Collective」にも注目。昨年、「ハニーランド 永遠の谷」が史上はじめてこの部門と長編ドキュメンタリー映画賞部門でダブルノミネートを果たしたばかりだが、「Collective」が2年連続で快挙を成し遂げる可能性が高い。一昨年のトロント国際映画祭でも話題になった本作については、こちらのコラムに詳しいので参照のこと。
考察④ 常連国フランスからは壮年女性の同性愛カップルを描く「Two of Us」がエントリー。昨年の「レ・ミゼラブル」に続けてノミネートを狙う。

長編アニメーション映画賞
toystory4 ソウルフル・ワールド ◯
missinglink ウルフウォーカー ◯
ilostmybody フェイフェイと月の冒険 ◯
howtotrainyourdragon 2分の1の魔法 ◯
frozen2 The Croods: A New Age ◯
klaus The Wolf House
abominable ルパン三世 THE FIRST
tenkinoko きみと、波にのれたら
kaiju 劇場版「鬼滅の刃」無限列車編
考察① 注目の「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」は果たしてノミネートされるのか?日本のマスコミが今年もっとも注目するトピックだが、正直なところそのハードルは少々高いと言わざるを得ない。アカデミー賞の資格を得るために全米で限定的に劇場公開されることすら大きなニュースになる盛り上がりようで、ぜひともノミネートの快挙を勝ち取って欲しいところだが、前哨戦ではほとんど名前があがっていない。ただ、日本での特大ヒットぶりはアカデミー会員の耳にも当然入っているはずで、話題性という意味では他作品に負けていないはず。あとはアカデミー賞に向けたキャンペーンにどれだけ力が注がれているかにかかっていると言っていいだろう。その点、北米での配給を担当するアニプレックス・アメリカは実績が乏しく、不安を残す。
考察② 日本勢からは他に「ルパン三世 THE FIRST」「きみと、波にのれたら」がエントリー。アニー賞で実績を遺した「きみと、波にのれたら」により大きなチャンスがありそうだが、ノミネートまでは厳しいか。
考察③ 実際のところ、ノミネートされるのは前哨戦実績上位5作品でほぼ決まりという下馬評で、他作品が割って入る余地はなさそうだが、逆にこの盤石の5作品のあいだに割って入ることができれば、日本作品にとっては嬉しいサプライズとなる。大逆転を期待したい。

短編アニメーション映画賞
夢追いウサギ ◯
Genius Loci ◯
If Anything Happens I Love You ◯
カパエマフの魔法石 ◯
Opera
Out
The Snail and the Whale
To Gerard
Traces
Yes-People ◯

長編ドキュメンタリー映画賞
apollo11 タイム ◯
americanfactory ディック・ジョンソンの死 ◯
honeyland Collective ◯
forsama ボーイズステイト ◯
onechildnation オクトパスの神秘:海の賢者は語る
thecave The Truffle Hunters
biggestlittlefarm ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け ◯
advocate すべてをかけて:民主主義を守る戦い
maiden Gunda
knock The Painter and the Thief
aquarela MLK/FBI
democracy 76 Days
greathack 老人スパイ
doc_midnight ノットゥルノ 夜
doc_midnight Welcome to Chechnya
考察① すでに配信されている作品がいくつかあり視聴してみたが、個人的にダントツで面白かったのは「ボーイズステイト」(Apple TV+で配信中)。テキサス州で行われている17歳の少年たちによる疑似選挙の模様をおさめた作品で、くじ引きで2派に分類された少年たちがお互いに激論を交わし、妥協や駆け引きを駆使して選挙戦を戦っていく姿が実に興味深かった。ぜひノミネートされてほしい。
考察② 前哨戦実績トップは「タイム」(Amazonプライムビデオで配信中)。不当に長期投獄された夫のために奔走する黒人女性の姿を数十年にわたり追いかけた作品で、#BlackLivesMatter文脈においては重要な作品となる。
考察③ 「ディック・ジョンソンの死」(Netflixで配信中)は、いつかくる老齢の父との別れを見越して、実の父にいろいろな死に様を演じさせて心の準備をしたいと願う娘が監督した異色作。上から落ちてきた物で頭を打って死んだり、自宅の階段で足を滑らせて死んだり、父親のディックは自分の死を自分で演じることで、こちらも死というものに向き合っていく。ラストは涙なくして見られないエンディングを迎える構成で、アカデミー会員にも受けがよさそうだ。
考察④ 「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」も異色な一本。人生に疲れた映像作家が海で出会ったタコと心を通わせ、生きる意味を取り戻していく。実は犬やネコ並みに知能が高いというタコが、カメラを向ける主人公に心をひらいていく様が映し出される瞬間は驚きと感動に包まれる。ショッキングなラストもふくめ、観た者には忘れられない一本になるだろう。
考察⑤ 「ハンディキャップ・キャンプ:障がい者運動の夜明け」はオバマ夫妻率いる製作会社が贈る社会派作品。かつて障害者たちが集って交流を深めた“ジェネドキャンプ”の貴重な映像と、そこから生まれた障害者の人権運動を描く。オバマ夫妻は前作「アメリカン・ファクトリー」ですでにオスカーを受賞済みだが、この新作でもノミネートの可能性は高い。

短編ドキュメンタリー映画賞
Abortion Helpline, This Is Lisa ◯
Call Center Blues
Colette
A Concerto Is a Conversation
Do Not Split ◯
Hunger Ward ◯
Hysterical Girl
ラターシャに捧ぐ 記憶で綴る15年の生涯 ◯
The Speed Cubers
ソフィア・ローレンだったなら ◯

短編実写映画賞
Bittu ◯
Da Yie ◯
Feeling Through
The Human Voice
The Kicksled Choir
The Letter Room ◯
The Present ◯
Two Distant Strangers
The Van
White Eye ◯

★ PICK UP ★

第96回アカデミー賞関連

第96回アカデミー賞関連

◾ 第96回アカデミー賞全部門ノミネーション予想 ◾ 第96回アカデミー賞前哨戦結果 ◾ 第96回アカデミー賞全部門予想 アカデミー賞受賞結果速報 作品賞:「オッペンハイマー」 監督賞:クリストファー・ノーラン(オッペン […]

★ PICK UP ★

第95回アカデミー賞結果

第95回アカデミー賞結果

作品賞 : 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」 監督賞 : ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナート(エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス) 主演男優賞 : ブレンダン・フレイザー(ザ・ […]