
節目となる第60回を迎えるカンヌ国際映画祭。コンペ部門には今年もバラエティ豊かな作品が揃った。目玉はオープニング上映の栄誉も勝ち取ったウォン・カーウァイの「My Blueberry Nights」。アジアの雄カーウァイが初めて手がける全編英語作品だ。カーウァイは前作「2046」でもカンヌに参戦しているが、その時はお披露目ギリギリまで編集作業に追われ、結局ベータ版での上映となってしまったという前科がある。ただ、今回はすでに作品も完成済みとのことで、カーウァイ初のパルムドール戴冠が期待される。
ただ、今回審査員長を務めるのは「クィーン」でアカデミー賞にノミネートされたスティーブン・フリアーズ。カーウァイとは作風が全く相容れない気がするだけに最高賞まではどうか。突出した出来でない限り監督賞あたりでお茶を濁されそう。カーウァイのように雰囲気で全てを語る作家が、言語を異にする舞台でこれまで通りの結果を出すのは難しいのでは。アジアの言語だからこそ醸し出されていた神秘性が、馴染みのある英語に置き換わることで失われてしまう可能性は大。「キリング・ミー・ソフトリー」でただのエロ監督に成り下がったチェン・カイコーの二の舞だけは避けたい。
昨年は「麦の穂を揺らす風」がイギリス映画として久々のパルムドールを受賞。過去10年ではアメリカ映画が3、ベルギーが2、イタリア、ギリシャ、イラン、日本が各1回ずつの受賞となっている。純粋なフランス映画の受賞は87年の「悪魔の陽の下に」まで遡らなければならず、ホスト国たるフランスは出品作が多い割にかなり不遇の扱いを受けていると言える。今年もフランス作品は若手監督の参戦が多く、久々のパルムドールはお預けとなる可能性が高い。
下馬評で有力視されているのはコーエン兄弟の新作「No Country For Old Men」。過去に2度パルムドールを受賞しているが、3度目の戴冠も十分ありうる。同じく2度のパルムドールを受賞しているエミール・クストリッツァの「Promise Me This(Zavet)」も当然有力。前回参戦の「ライフ・イズ・ミラクル」は無冠に終わったが、リスペクト厚い監督だけに巻き返しある。
4本がエントリーしているアジア作品にもチャンスがありそう。最も可能性が高そうなのは、キム・ギドク監督の「Breath」か。ヴェネチア、ベルリンで監督賞を受賞しているギドク監督が満を持してカンヌに初参戦。作風はカンヌ向きだけに高い評価で迎えられそうだ。同じ韓国のイ・チャンドン監督「Secret Sunshine(蜜陽)」も有力。2時間30分の力作だけに、上映時間が1時間以上短いギドク作品よりもも上にとられる可能性もある。日本から参戦の河瀬直美「殯(もがり)の森」は厳しい戦いになりそう。過去パルムドールを受賞した日本人監督は黒澤明、今村昌平など世界的に知名度のあるベテランばかり。また、近年のパルムドール受賞監督を見ても名だたる名監督揃いで、ネームバリューが重視される確率が高い。キャリアの浅い河瀬には不利なデータだ。
ということで、パルムドール最右翼はまだ無冠のベテラン、アレクサンドル・ソクーロフの「Alexandra」と予想する。同じロシアのズビャギンツェフに比べキャリア豊富で実績は十分。作品の出来さえ問題なければ戴冠の順番。ロシア映画は長くパルムドールから遠ざかっているだけにそろそろの気配もある。ソクーロフの戴冠を阻止するとすれば、受賞経験のあるコーエン兄弟、クストリッツァあたりが有力か。
注目したいのはイラン人監督サトラピが送り込んだアニメ作品「Persepolis」。審査員賞あたりで推されそうな気がしてならない。監督賞は新鋭ファティ・アキン、キム・ギドク、メキシコのカルロス・レイガダスあたりの争いになるのでは。
第60回カンヌ国際映画祭 コンペティション部門 結果予想
★パルム・ドール
「Alexandra」監督:アレクサンドル・ソクーロフ
★審査員特別グランプリ
「No Country For Old Men」監督:ジョエル&イーサン・コーエン
★審査員賞
「Persepolis」監督:マルジャン・サトラピ&バンサン・パロノー
★男優賞
マチュー・アマルリック「The Diving Bell And The Butterfly」
★女優賞
ハ・ジョンウ「Breath」
★監督賞
ファティ・アキン「The Edge of Heaven (Auf der anderen Seite)」
★脚本賞
エミール・クストリッツァ「Promise Me This(Zavet)」
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審査委員長
スティーブン・フリアーズ(イギリス)映画監督
審査員
マリア・デ・メディロス(ポルトガル)女優
マギー・チャン(中国)女優
トニー・コレット(オーストラリア)女優
サラ・ポーリー(カナダ)監督・女優
マルコ・ベロッキオ(イタリア) 監督
オルハン・パムク(トルコ)ノーベル賞受賞作家
ミッシェル・ピッコリ(フランス)俳優
アドラハマヌ・シッサコ(モーリタニア)監督
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相変わらずに素晴らしい予想、ありがとうございました、管理人様~
ところで、無常なカンヌのことだから、きっと最後に最後「何だと!」って結果は出てくるでしょうかな。まぁ、それこそ一番期待な部分かもん。
実は、自分もソクーロフ監督の不運なカンヌキャリアに興味を持ってる、今度こそね。クストリッツァとコーエン兄弟の場合、何かの賞を取らなかったら、逆に不自然じゃないって感じがする。ちなみに、ビヨークの女優賞を考えると、ノラ・ジョーンズにもビッグチャンスあるのでは?
投稿者: kaniska | 2007年5月12日 12:11
>kaniskaさん
毎度どうもです。
カンヌの予想は毎年やってますが当たった試しはないですねぇ。まだほとんど情報のない作品ばかりで、おまけに審査員の好みが色濃く反映されるだけに予想のしようがないですね。
なるほど、ノラ・ジョーンズも確かにチャンスありですね。ただ「My Blueberry Nights」のプロット読むと、どうにも不安になるんですよねぇ……。
投稿者: gwin | 2007年5月12日 23:47