パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド
監督:ゴア・ヴァービンスキー
脚本:テッド・エリオット、テリー・ロッシオ
出演:ジョニー・デップ、ジェフリー・ラッシュ
配給:ブエナビスタ
結論から言うと、この第3作はシリーズの中で最も冗長で、退屈で、笑えないシロモノになっている。無駄に張り巡らされた伏線、必要のないエピソード、無理にこじつけたユーモアが上映時間を必要なそれの倍以上に膨れ上がらせている。
前作「デッドマンズ・チェスト」は批評家受けこそ悪かったが、どこかアナログな雰囲気を漂わせる、大味ながら豪快で楽しい快作だった。第1作「呪われた海賊たち」の主要キャラのみならず脇役キャラまで全て再登場し、家族的な温かさまで感じさせた。ビル・ナイ演じるデイヴィ・ジョーンズのおどろおどろしい風貌に秘めた愛の逸話、大蛸クラーケンの登場も映画の盛り上げに一役買った。
だが残念なことに、物語の構成に必要なキャラクターが全て前作で出尽くしてしまったため、今回の最終章では新たな出会いの楽しみがなくなってしまった。新たに登場するのはチョウ・ユンファ演じるサオ・フェンくらいのものだが、これも物語冒頭でいきなり姿を現すものの、これといって個性のない凡キャラクター(渡辺謙がオファーされなくてよかった)。物語中盤にぞろぞろと現れる海賊長たちに至っては、これ何の冗談?と苦笑するしかない。たった9人の海賊長なのに白塗りのバカ殿メイクが2人と被ってる始末。海賊を魅力的に見せる映画のはずでは……。唯一、その個性でシーンスティラーとなるのがキース・リチャーズ演じるスパロウパパだが、これも物語には何の必要性もないキャラクターで、その出演シーンは2分もない(あれが限界の尺には違いないのだが)。前作で登場したキャラクターについても、宿敵デイヴィ・ジョーンズは東インド会社の僕に成り下がり、トム・ホランダー演じるベケット卿は、最期まで何故ホランダーがキャスティングされたのかわからないまま無個性に終わる。
ジャック・スパロウという強力なキラー・キャラクターが引っ張ってきたシリーズだけに、今回もスパロウ船長の魅力におんぶで抱っこのスパロウ本願な部分が脚本に見え隠れする。ただし、今回は悪乗りが過ぎた。デイヴィ・ジョーンズの海の墓場でスパロウが幻覚に陥るシーンは全くの無駄。あれをカットしないのはデップが怖いから?
砂漠を滑走するブラック・パール号、大渦に飲まれながら激戦を繰り広げるパール号とフライング・ダッチマンなどスケールの大きな映像は必見だが、物語のテンポが決定的に悪いため乗り切れない。アクションシーン自体にも前作にあった工夫が感じられず、ただのチャンバラ劇に成り下がっている。
さてこのシリーズ、デップも乗り気であと3作は続編が作られそう。とりあえずウィルとエリザベスの物語はもう満腹なので、今度はスパロウ船長を中心に全く新しい物語を創造してほしい。