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[ひとくちレビュー] ボーン・アルティメイタム

全ての面において最高を極めた、最強のハリウッド映画

このシリーズの売りは、徹底的な肉弾戦、リアリズム、スピード感、決断力、実戦テクニック、ダビデ対ゴリアテ的構図など様々。ドラマ面においては、ボーンという主人公が超人的な頭脳・体技を誇りながらも、観客の感情移入しやすい背景を持つことが大きな魅力になっている。

こうした様々な魅力を有する前二作もかなりよく出来た良作だったが、シリーズ最終章と謳われる本作は、それらを遥かに凌駕する大傑作に仕上がっている。このジャンルではもはや超えることが難しいレベルに達してしまった。

まず脚本が圧巻。前作「ボーン・スプレマシー」のクライマックス近く、ロシアを舞台にした追跡劇から物語がスタートする。そして6週間の後にボーンはNYに上陸し、パメラ・ランディにアクセスを試みるのだが、これが実は「~スプレマシー」のラストシーンにつながるのだ。パズルのピースがぴたりと嵌るようなこの卓越した構成力には舌を巻く。ヨーロッパを中心に次々に舞台を変える展開の速さも小気味良く、細部まで練りこまれた構成とは対照的なシンプルな物語のおかげで観客が混乱を覚えることもない。

ポール・グリーングラスのリアリティ重視の演出ぶりにもますます磨きがかかる。映画のひとつの肝である高度な実戦テクニックをサラリと流し、飽くまでその場の勢いを重視する。砕けたガラスの飛散した塀をとっさに洗濯物のタオルを手に巻いて飛び越えたり、車の衝突シーンではインパクトの瞬間に助手席のシートベルトにその身を絡めたり。そのさりげない演出には唸らされてばかりだ。格闘シーンにも更なる進化が見て取れる。タンジールの住居の一室で展開される工作員との格闘はこの映画の白眉だ。身近にある本を使いタオルを使い、命からがらに強敵を仕留めるその戦いぶりには、うそ臭さが微塵も無い。2人がガチンコで殺しあう緊張感に満ち溢れている。

新キャストとなるデヴィッド・ストラザーンについては、冒頭ちょっと違和感を感じた。もともと感情表現がそれほど豊かではないストラザーンだけに、ニヒルなボーンの相手役としてリアクションに物足りなさがあった。ただ、ニッキー暗殺をめぐってパメラ・ランディと口論を繰り広げる段になって、この冷徹な組織人間の怖さが露になる。キレたら何を仕出かすかわからない恐怖はストラザーンのキャラクターと演技力をもって初めて表現可能になったものだ。秘密を握る記者役のパディ・コンシダイン、マリーの兄役としてワンシーンだけ顔を出すダニエル・ブリュール、黒幕の2人スコット・グレンとアルバート・フィニーなど、チョイ役がやたら豪華なのは大ヒットシリーズとしてのご愛嬌か。

マット・デイモンはかねてから本作でシリーズの打ち止めを宣言しているが、脚本のクオリティが保たれるのならば、是非とも続行を希望する。これほど興奮させてくれるハリウッド大作は他にない。CG全盛時代に逆行するこのシリーズのチャレンジングな姿勢の何と凛々しいことか。こういう映画があるから、ハリウッド映画を見るのは止められない。





日時: 2007年11月11日 10:02 | コメント (7) | トラックバック (0)


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この記事に対するコメント (7)

はじめまして。いつも楽しく更新を拝見しております。
今回の記事、「さすが!わかる人にはわかってもらえた」と嬉しくて書き込みしました。
噂だと原作が3で終わりでありながら、5作までの資金を集めたらしいですので、今後の続編を私も期待します!

>ADSRXさん
はじめまして。ありがとうございます。
5作目まで資金を集めているのですか!それは朗報です。あとはポール・グリーングラスとトニー・ギルロイをちゃんと押えられるかですね。2人とも今まで以上に引っ張りだこになるでしょうから・・。マットは何気に続編に乗り気のようだし、ぜひ実現してもらいたいものです。

 タンジールのボーンVSデッシュの肉弾戦は、私的にはアクション映画史上最高の閉所肉弾戦でした。これを観るだけでも、もっぺん金払っていいと思ってます。  
 時系列については、シリーズファンのくせに愚かにも気付いてませんでした。「またロシア行ってんの?」「またビルから覗き?台詞もお約束!?」 見方が浅い…というか不覚。

>stovalさん
「~スプレマシー」を直前に復習しておかないと、細部まで理解するのはちょっと難しいかもしれませんね。ロシアでの逃亡シーンでは、前作で怪我した足をちゃーんとひきずって歩いているあたりが細かいです。
デッシュとの一連の攻防はハラハラドキドキでした。ニッキー死んだらダメ!と真剣に祈ったり……。狭所のアクションという点では「ダニー・ザ・ドッグ」もなかなかでしたが、今回のはさらに進化したそれでした。満点。

フランク・マーシャルはアルティメイタムの段階で企画構想を5部作というスタイルへ変更して作品を作り出したそうです。但し、主演のアットくんが了承すれば、という話まで知っていました。それをふまえて考えると、今回のアルティメイタムの後半でのジュリアが次回作の布石になっているのかもしれません(元彼女とかね)。
ちなみに、スプレマシーをまだ観ていない人は、DVD購入されることをお勧めします。特典映像では本編から大事なシーンを大幅にカットしているので、ハリウッドの「編集」という分野がどれほど権力を持っているか驚くと思います。新作のDVDもいまから楽しみです。長文失礼しました。

ちなみに、ポール・グリーングラスは2009年にImperial Life in the Emerald Cityという作品をマットを起用して準備中です。

さすがにポール・グリーングラス監督、あまりに素晴らしくてびっくりした。ところで、「there will be blood」の予告編はご覧になったのかな?管理人様。

そういえば、日本も「いまさら」ボーン・アルティメイタムの公開?留学の時いつも感心させていただく日本の映画館にしては、これほど同歩率低下のも珍しいなぁ~。うちの国は韓国を見習い、「国産映画保護」って馬鹿ヤツをやってる、「せめてボックスオフィスの55%を占める」とか、政策体現その一:「ボーン3」と「Die hard4」を同時期公開、しかもただ三週間。酷過ぎる……

> kaniskaさん
毎度どうもです。そうですか、中国では映画ファンにとってはツライ状況のようですね・・。日本では今のところ「国産映画」がとても人気で、今やハリウッド映画を完全に上回っている状況です。ただ、半端でないクオリティの「ボーン~」よりも、ケータイ小説の映画化「恋空」がヒットしてしまうあたり、問題な気もしますが・・・。

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