つぐない (監督:ジョー・ライト/フォーカス・フィーチャーズ)
JUNO/ジュノ (監督:ジェイソン・ライトマン/フォックス・サーチライト)
◎フィクサー (監督:トニー・ギルロイ/ワーナー・ブラザース)
▲ノーカントリー (監督:ジョエル&イーサン・コーエン/ミラマックス)
○ゼア・ウィル・ビー・ブラッド (監督:ポール・トーマス・アンダーソン/パラマウント・ヴァンテージ)
「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」がともに最多8部門ノミネートで先頭を走る今年のアカデミー賞戦線。作品賞もこの2作品の争いになるというのがもっぱらの下馬評だが、果たして本当にそうか。どちらも内容は暗く、陰惨としていて決してアカデミー賞向きとは言いがたい。作品のクオリティは申し分ないが、どちらもこれまでのアカデミー賞の傾向からすれば敬遠されるべき作品だ。アカデミー会員もどちらか一方を選べと言われれば頭を悩ませるはずで、第三の選択肢に手が伸びる可能性は決して低くないと見る。
個人的な好みでいえば「つぐない」に一票入れたいが、監督賞にノミネートされていないのは致命的。従来までのアカデミー賞なら大量受賞があっておかしくない作品だが、ここまで苦戦を強いられたのはやはりアカデミー賞自体が変わってきているからだろう。
「JUNO」はインディ作品としては史上2番目となる大ヒットを記録。近年めざましい活躍を見せるフォックス・サーチライト配給の中でも、「リトル・ミス・サンシャイン」「サイドウェイ」を大幅に上回る興行収入を稼ぎ出している。昨年もっとも成功した作品の1本に数えていいだろう。ただし、作品賞を受賞するには小粒すぎ、娯楽色が強すぎるのもマイナスだ。
「フィクサー」は主要部門に限れば最多ノミネートであり、実はアカデミーにもっとも評価されている作品ということもできる。ハリウッドの兄貴分ジョージ・クルーニーの存在も大きく、支持票が期待できそうだ。唯一のメジャー配給作品という点もプラス。娯楽性を備えつつ、社会派なさ区品に仕上がっている点もバランスがいい。「つぐない」の次にアカデミー賞向きの作品といえそう。本命2作品を逆転する可能性があるとすればこの作品だろう。
○ポール・トーマス・アンダーソン(ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
◎ジョエル&イーサン・コーエン(ノーカントリー)
トニー・ギルロイ(フィクサー)
ジュリアン・シュナーベル(潜水服は蝶の夢を見る)
ジェイソン・ライトマン(JUNO/ジュノ)
コーエン兄弟にポール・トーマス・アンダーソン。この異色の映像作家たちがオスカー像を争っているという事実が、アカデミー賞の本質が変化していることを如実に物語っている。本来ならば両者とも、ノミネートはされても受賞はない、という種類の監督のはずで、どちらかが受賞するだろうという展開は到底予想できなかった。もしかしたらやはりこの2人の受賞はないのかもしれないが、他の3候補も受賞はなさそうな面子ばかり。ギルロイは脚本家として評価されるだろうし、シュナーベルは作品賞にノミネートされていないのが致命的、ライトマンはまだ若い。やはり作品賞部門でも本命視されるコーエン兄弟とPTAの争いになるだろう。
で、おそらくアカデミー会員たちの思考は、「ノーカントリー」と「ゼア」の2本に等しく賞を授与したいから、一方に作品賞を、もう一方に監督賞をあげよう・・・ということになるんじゃなかろうか。とすれば、映画監督としての実績に勝るコーエン兄弟に監督賞をあげておき、作品賞は「ゼア」でというのが自然な流れだ。両者ともに初めて手がけた原作モノで評価されるというのは何とも皮肉だが、作家として過小評価されているわけでは当然ない。2人とも今回は映画としてあまりにも異質な空気を作り出しており、映像作家としての個性を十二分に発揮したことがより高く評価されたということだろう。どちらが受賞しても納得。ただ、これまでとはあまりに異なるスタイルで勝負したPTAの受賞はやはり抵抗がある。彼には次回、本来の自分のスタイルで受賞を果たしてほしい。
ジョージ・クルーニー(フィクサー)
◎ダニエル・デイ=ルイス(ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
ヴィゴ・モーテンセン(Eastern Promises)
▲ジョニー・デップ(スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師師)
トミー・リー・ジョーンズ(告発のとき)
ここは多くを語る必要はなさそうだ。ダニエル・デイ=ルイスの受賞はまず動かないだろう。ルイスは前回「ギャング・オブ・ニューヨーク」でノミネートされたときも本命視されたが、過去の受賞経験が邪魔をして落選。ただし、今回は完全に機が熟した感あり。加えて、SAG授賞式でヒース・レジャーに追悼の辞を述べたスピーチが大好評で、いよいよ受賞は間違いない雰囲気を帯びてきた。もしルイスが落選するようなことがあれば、その夜最大のサプライズということになるだろう。
前哨戦実績で2番手につけたのはジョージ・クルーニーだが、もしルイスを逆転する可能性があるとすればジョニー・デップのほうだろう。これが3回目のノミネートで受賞歴はなし。これまでずっとハリウッド大作と距離を置いてきたデップが「パイレーツ~」シリーズで大ブレイクするや、アカデミーもそれまでの冷たい態度を一変させ、2004年以降5年間で3回ノミネートという寵愛振りを見せている。今回は初めて美声を披露しており、アピールは十分。相手がルイスでなければ受賞の可能性はもっと高かったかも……。
クルーニーは「シリアナ」で助演男優賞を受賞したばかりで2度目の受賞はまだ先。トミー・リー・ジョーンズはそろそろ2度目の受賞があっていい実績の持ち主だが、今回は見送り。次回候補時は受賞争いできそうだ。今回唯一初めてのノミネートとなるヴィゴ・モーテンセンは、劇中見せる全裸での格闘シーンがとにかく話題。インパクトある演技で受けはよさそうだが、今回は相手が強すぎる。
ケイト・ブランシェット(エリザベス:ゴールデン・エイジ)
◎ジュリー・クリスティ(アウェイ・フロム・ハー 君を想う)
▲マリオン・コティヤール(エディット・ピアフ/愛の賛歌)
○エレン・ペイジ(JUNO/ジュノ)
ローラ・リニー(The Savages)
アンジェリーナ・ジョリーのまさかの落選があったノミネート発表もサプライズだったが、受賞者発表でも思わぬサプライズが待っていそうな今年の主演女優部門。例年役者不足を嘆かれる部門だが、今年は多くの有力候補がラスト5の座をめぐって熾烈な争いを繰り広げた。候補落ちした中にも、先にあげたジョリーやジョディ・フォスター、キーラ・ナイトレイ、ヘレナ・ボナム=カーターらのビッグネームがある。
ノミネートされた5人は誰もが受賞の資格を十分に備えているが、その中でも目下最有力候補と目されているのがジュリー・クリスティだ。クリスティはキャリア駆け出しのころに大抜擢された「ダーリング」でいきなりオスカーを受賞するという華々しいデビューを飾った美人女優。それから長い年月を経て、豊富な経験に裏打ちされた演技派へと変貌を遂げた。2回目の主演女優賞受賞となれば、ジョディ・フォスターと肩を並べるステータスに上り詰めるが、彼女ならその資格はある。もっとも、ヒラリー・スワンクにあっさりと2つ目のオスカーを授与していることを思えば、ステータスうんぬんはそれほど気にしなくてもよさそうだ。
前哨戦でクリスティと接戦を繰り広げたエレン・ペイジだが、終盤戦の重要賞で全敗。やや水をあけられた格好だ。女優としてある程度の実績が要求されるこの部門ではキャリアの浅さは大きなハンデとなる。マリオン・コティヤールはゴールデン・グローブ賞を受賞して波に乗るが、フランス人女優であることがネックになりそうだ。役柄のインパクトは強烈だが、歌が吹き替えであったこと、メイクの力に助けられたことなどが受賞を阻む要因になる可能性はある。
最終的にはこの3者の争いになりそうだが、役者仲間からのリスペクトも厚そうなクリスティがリードか。作品の人気でペイジがどこまで迫れるか。コティヤールの逆転があっても不思議はない。
ケイシー・アフレック(ジェシー・ジェームズの暗殺)
◎ハヴィエル・バルデム(ノーカントリー)
▲ハル・ホルブルック(Into the Wild)
トム・ウィルキンソン(フィクサー)
フィリップ・シーモア・ホフマン(チャーリー・ウィルソンズ・ウォー)
ここは断然ハヴィエル・バルデムが強い。作品の力もさることながら、バルデム自身が最初から最後まで作品をグイグイ引っ張っており、助演部門にエントリーするのがおかしいくらい。実質主演のバルデムが受賞の大本命だ。
実質主演といえば、「ジェシー・ジェームズの暗殺」のケイシー・アフレックも同じ。共演のブラピがネームバリューで主演クレジットのため、助演扱いとなっている。アフレックは07年、兄貴が監督した「Gone Baby Gone」の主演でも高評価を受けており、昨年もっともブレイクした俳優の1人として記憶されることになりそうだ。ただし、2本あわせての評価でもバルデム逆転は難しい。キャリアは豊富だがまだ若く、オスカー俳優の称号を与えるのは早い。
もし逆転があるとすれば、この部門特有のキャリアリスペクト票がハル・ホルブルックに流れた場合だろう。出演作多数のホルブルックだが、主要映画賞で評価されたことは一度もなかった。エミー賞の常連だった頃からも随分と時間が経っており、これが最大にして最後のチャンスと言えるだけに、会員たちの情が動く可能性がある。
◎ケイト・ブランシェット(アイム・ノット・ゼア)
ルビー・ディー(アメリカン・ギャングスター)
エイミー・ライアン(Gone Baby Gone)
▲ティルダ・スウィントン(フィクサー)
○セルシャ・ローナン(つぐない)
前哨戦で圧倒的な強さを見せたエイミー・ライアンがスタートから独走。他候補を10馬身以上つき離す大逃げを見せたが、4コーナー手前で失速。ライアンの失速を虎視眈々と狙っていたケイト・ブランシェットが4コーナーで先頭に立ったが、ここで最後方に待機していたルビー・ディーが強烈な追い込みを見せる。踏ん張るブランシェットとディーの並走が続くかと思いきや、今度はさらに外からティルダ・スウィントンがじわじわと追い上げてきた!一発の魅力あるセルシャ・ローナンはまだ足を貯めており、最後の最後に3人をまとめて交わす可能性を秘める。
まさに激戦。候補者の全てに等しく受賞のチャンスがある。キャリアリスペクト票で逆転を狙うルビー・ディーが目下の勢いNo.1だが、作品に力のある「フィクサー」のスウィントンも差はない。ブランシェットはすでに1度受賞している点がネックだが、アカデミーの寵愛を考えれば2度目の受賞も十分にある。新星ローナンは老会員たちには抗い難い魅力の持ち主。もともと子役に優しい部門でもあり、「ピアノ・レッスン」でサプライズ受賞のアンナ・パキン再来はありうる。エイミー・ライアンはやはり知名度の低さに足を引っ張られている感があるが、前哨戦圧勝の実績は無視できない。
それぞれに一長一短あり予想が難しいが、誰が受賞したら授賞式が盛り上がるかを考えると、1つの答えが見えてくる。おそらくもっとも盛り上がるのは、艶やかな衣装に身を包んだケイト・ブランシェットが壇上に現れる場合だろう。その美しさもさることながら、同郷の故ヒース・レジャーに追悼の辞を述べれば会場は割れんばかりの拍手に包まれるはず。授賞式のハイライトとなるだろう。今年はWGAストで授賞式の準備が十分に行えなかった分、式の盛り上がりは受賞者たちの手にかかっていると言ってもいい。その大役を務められそうなのは、5人の中ではブランシェットだけだ。
○ディアブロ・コディ (JUNO/ジュノ)
ナンシー・オリヴァー (Lars and the Real Girl)
◎トニー・ギルロイ (フィクサー)
ブラッド・バード (レミーのおいしいレストラン)
タマラ・ジェンキンス (The Savages)
前哨戦を完勝したディアブロ・コディが受賞の最右翼。今年のこの部門には女性が3人もノミネートされているのが話題で、授賞式ではその総決算としてコディの名前がコールされることになるだろう。コディはこの「JUNO/ジュノ」がデビュー作となるが、そのきっかけは、映画のプロデューサーがたまたま彼女のブログを見つけ、ファンになったからだそう。プロデューサーが彼女に映画の脚本を書くよう勧めたところ、「JUNO/ジュノ」が生まれたという。アカデミーはこういうシンデレラ・ストーリーが大好き。受賞は磐石か……というのが大方の予想だが、ちょっと待った。
「フィクサー」のトニー・ギルロイがこのシンデレラガールの彼女の受賞を阻む可能性は十分にある。「ボーン」シリーズの大成功で脚本家としての評価を固めたギルロイは、先日ようやく結末を見たWGAのストライキに積極的に参加。集会に参加してビラを配ったり演説を行ったりと、先頭にたって脚本家の権利を訴えた。今回は監督賞にもノミネートされているが、評価されるとすれば間違いなくこちらの部門。加えてギルロイは今年「ボーン・アルティメイタム」の脚本も手がけており、2作あわせての評価となる。アカデミーが新参の女性脚本家への投票を渋れば、ハリウッドへの貢献度高いギルロイの勝利となるだろう。
▲クリストファー・ハンプトン (つぐない)
サラ・ポリー (アウェイ・フロム・ハー 君を想う)
ロナルド・ハーウッド (潜水服は蝶の夢を見る)
◎ジョエル&イーサン・コーエン (ノーカントリー)
○ポール・トーマス・アンダーソン (ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
この部門はいわば作品賞争いの前哨戦。「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のどちらかが勝者となる可能性が高そうだ。とはいえ、前哨戦 では前者のコーエン兄弟が圧勝。このまま受賞の確率が高い。編集賞、監督賞、作品賞部門でもノミネートされている兄弟、下手をすれば一夜にしてオスカー像 を4つ持ち帰ることになる。もともとアカデミーには過小評価されてきた兄弟だけに、いきなり掌を返したような大盤振る舞いがあるかどうかは微妙なところだ が、4つの部門の中ではここが一番確率が高いように思える。正直なところ、原作にほぼ忠実な脚色よりも、原作の持つ空気を巧みに表現した演出のほうが評価 されて然るべきだが、相手関係から見てもここは堅いところ。
「つぐない」のクリストファー・ハンプトンは10万語からなる大長編を手堅くまとめた功績が評価されれば逆転も。脚色作業としては「ノーカントリー」より もはるかに難易度が高かったはず。「潜水服は蝶の夢を見る」のロナルド・ハーウッドは、自身が書いた英語の脚本がフランス語に翻訳されるというプロセスを 踏んでいる分、正当な評価が難しい。監督のジュリアン・シュナーベルも、ハーウッドの脚本から撮影時点でかなり変更があったと発言している。「戦場のピア ニスト」ですでに受賞していることもあり、今回は見送りが妥当。
○ロジャー・ディーキンス (ジェシー・ジェームズの暗殺)
シーマス・マクギャヴィー (つぐない)
ヤヌス・カミンスキー (潜水服は蝶の夢を見る)
▲ロジャー・ディーキンス (ノーカントリー)
◎ロバート・エルスウィット (ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
現役の撮影監督の中では抜きん出た手腕のロジャー・ディーキンスがダブル・ノミネートの快挙達成。過去5度ノミネートされながら1度も受賞していない無冠 の帝王がついにオスカー像を手にするときがきたか。ただし、どちらもとても美しく印象的な画作りのため票割れは必至。下手をすると6度目の落選も……。実 際、先日発表された撮影監督組合賞では「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」のロバート・エルスウィットに受賞を許している。実績からすればディーキンスが勝 利すべきところだが、年に二度もいい仕事をしてしまったのが仇になりそう。ここはエルスウィットの勝利か。
◎クリストファー・ルース (ボーン・アルティメイタム)
ジュリエット・ウェルフィング (潜水服は蝶の夢を見る)
ジェイ・キャシディ (Into the Wild)
○ロデリック・ジェインズ (ノーカントリー)
▲ディラン・ティチェナー (ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
作品賞を占う上で重要視されるのが編集賞部門。過去10年で実に半数の5回が作品賞受賞作と一致しており、昨年も「ディパーテッド」のセルマ・スクーンメイカーが受賞を果たしている。
となると、ここは「ノーカントリー」と「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の争いか。前哨戦実績上位は前者のロデリック・ジェインズだが、このジェインズが 実は=コーエン兄弟であることは周知の事実で、ここが受賞争いのポイントになる。そもそもコーエン兄弟がこうした仮名を使うのも、監督が編集者を兼ねるの を編集者組合が認めていないから。この禁をすり抜けるコーエン兄弟に果たして票が集まるかどうか。兄弟は他にも3部門でノミネートされているので、この部 門で敬遠されることは十分に考えられる。
となると、「ゼア~」に勝利が転がり込む可能性が高いが、ここは編集者組合賞をサプライズ受賞の「ボーン~」を狙ってみたい。カット数は史上空前の数だっ たと聞くし、作品のクオリティの高さは他の候補作にも全くヒケをとらない。娯楽作のハンデはあるが、受賞の資格は十分だ。
アーサー・マックス:美術、ベス・A・ルビーノ:装置 (アメリカン・ギャングスター)
◎サラ・グリーンウッド:美術、ケイティ・スペンサー:装置 (つぐない)
デニス・ガスナー:美術、アナ・ピノック:装置 (ライラの冒険/黄金の羅針盤)
○ダンテ・フェレッティ:美術、フサンチェスカ・ロシアーヴォ:装置 (スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師)
▲ジャック・フィスク:美術、ジム・エリクソン:装置 (ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
実はこの部門、衣装デザイン賞とセットで評価される傾向にある。過去10年、同部門受賞作が同時に衣装デザイン賞を受賞した例は何と8回。過去5年に限れ ば100%の確率だ……というデータから予想を展開して昨年は大ハズレ。ただ、それでも信憑性のあるデータであることに間違いない。
今年、両部門にノミネートされているのは「つぐない」と「スウィーニー・トッド」。二者択一ならば、作品賞にもノミネートされている前者をとるのが妥当だ。
アルバート・ウォルスキー (Across the Universe)
◎ジャクリーン・デュラン (つぐない)
▲アレクサンドラ・バーン (エリザベス:ゴールデン・エイジ)
マリット・アレン (エディット・ピアフ/愛の賛歌)
○コリーン・アトウッド (スウィーニー・トッド/フリート街の悪魔の理髪師)
歴史モノが圧倒的に強い衣装デザイン賞部門。今年も「エリザベス:ゴールデン・エイジ」を筆頭に時代劇が軒並みノミネートされている。美術賞部門でも書い たように、この部門は美術賞とセットで評価される傾向がある。美術賞と同時ノミネートされている「つぐない」と「スウィーニー・トッド」が優位に立つ。ノ ミニーの知名度と実績なら断然後者のコリーン・アトウッドだが、アトウッドは06年に「SAYURI」で受賞したばかり。今回は「プライドと偏見」に続い て2度目の候補となるジャクリーン・デュランの順番だろう。
◎ダリオ・マリアネッリ (つぐない)
○アルベルト・イグレシアス (君のためなら千回でも)
ジェームズ・ニュートン・ハワード (フィクサー)
▲マイケル・ジアッキーノ (レミーのおいしいレストラン)
マルコ・ベルトラミ (3:10 To Yuma)
昨年はグスタヴォ・サンタオラヤがまさかの2年連続受賞。作品が有力視されていたことも功を奏した。今年は作品賞候補が2作品エントリー。うち「つぐな い」はシンプルなメロディと豊かな叙情で、映画の主役ともいえる存在感。音楽の存在感という点では「君のためなら千回でも」もヒケをとらないが、作品の評 価で「つぐない」に大きく遅れをとる。ダークホースは「レミーのおいしいレストラン」。マイケル・ジアッキーノはブラッド・バード監督の前作「Mr.イン クレディブル」でも素晴らしいスコアを提供している。
○"Falling Slowly" by グレン・ハンサード、マルケタ・イルグロヴァ (Once)
"Raise It Up" by ジャマール・ジョセフ、チャールズ・マーク、テヴィン・トーマス (August Rush)
"Happy Working Song" by アラン・メンケン、スティーヴン・シュワルツ (魔法にかけられて)
▲"So Close" by アラン・メンケン、スティーヴン・シュワルツ (魔法にかけられて)
◎"That's How You Know" by アラン・メンケン、スティーヴン・シュワルツ (魔法にかけられて)
注目すべきは3曲でエントリーの「魔法にかけられて」。作曲を手がけたのは、ディズニーアニメの黄金期を支えたアラン・メンケンだ。4つのオスカー像を持 つメンケンだが、ピクサーアニメが主流になるにつれ桧舞台から退いていた。今回、98年の「ヘラクレス」以来10年ぶりのノミネートとなる。3曲での票割 れが危惧されるが、この中では“That's Hou You Know”が票を集めそう。音楽通からの支持を一身に集めそうな“Falling Slowly”との熾烈な一騎打ちとなりそうだ。
◎Didier Lavergne、Jan Archibald (エディット・ピアフ/愛の賛歌)
リック・ベイカー、辻一弘 (マッド・ファット・ワイフ)
▲スティーヴ・ネイル、マーティン・サミュエル (パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド)
日本人としては「マッド・ファット・ワイフ」の辻一弘を応援したいところだが、作品が悪評高いだけに受賞は厳しそう。大御所リック・ベイカーとの共同クレジットは立派で、この分野では今後も第一人者として活躍してくれそうなだけに、次回以降
に期待したい。
受賞はエディット・ピアフの老年期をリアリズムたっぷりに手がけたフランス人メイクアップ・アーティストの2人だろう。技術的な部分よりも作品の出来が票に大きく影響するはずで、3作品の中で唯一まともな評価を受けている「エディット・ピアフ」の勝利は揺るがない。
○スコット・ミラン、デヴィッド・パーカー、カーク・フランシス (ボーン・アルティメイタム)
スキップ・リーヴセイ、クレイグ・バークリー、グレッグ・オルロフ、ピーター・ガーランド (ノーカントリー)
ランディ・トム、マイケル・セマニック、ドク・ケイン (レミーのおいしいレストラン)
ポール・マッシー、デヴィッド・ジアマルコ、ジム・ステュービー (3:10 To Yuma)
◎ケヴィン・オコネル、グレッグ・P・ラッセル、ピーター・J・デヴリン (トランスフォーマー)
「今年も」ケヴィン・オコネルに注目!今回で20回目のノミネートにして、なんと受賞経験なし。連続落選記録を更新中のオコネルは、昨年の授賞式オープニング・ムービーに登場し、「こんなにたくさんノミネートされているのに、まだ受賞してないんだよ」と笑顔でこぼした。連敗記録更新はそれはそれでドラマだが、そろそろオコネルの歓喜のスピーチも聞いてみたい。今回は候補作品中もっとも派手な映像が繰り広げられる「トランスフォーマー」でのノミネート。今度こそ受賞があっていい。
2番手はせめて技術賞部門で評価されてほしい「ボーン・アルティメイタム」。
○カレン・ベイカー・ランダース、ペル・ハルバーグ (ボーン・アルティメイタム)
スキップ・リーヴセイ (ノーカントリー)
ランディ・トム、マイケル・シルバーズ (レミーのおいしいレストラン)
◎マシュー・ウッド (ゼア・ウィル・ビー・ブラッド)
▲イーサン・ヴァン・ダー・リン、マイク・ホプキンス (トランスフォーマー)
近年の傾向からすると、SF作品よりも歴史モノが有利。昨年も「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」を破って「硫黄島からの手紙」が受賞した。その流れからすると、今回唯一の歴史モノである「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の受賞ということに。ジョニー・グリーンウッドの音楽をはじめ、音が全体を支配する映画だけに受賞があっていい。
マイケル・フィンク、ビル・ウェステンホファー、ベン・モリス、トレヴァー・ウッド (ライラの冒険/黄金の羅針盤)
▲ジョン・ノール、ハル・ヒッケル、チャールズ・ギブソン、ジョン・フレイジャー (パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド)
◎スコット・ファラー、スコット・ベンザ、ラッセル・アール、ジョン・フレイジャー (トランスフォーマー)
ここはハリウッド映画初の本格ロボット・アクションを見せてくれた「トランスフォーマー」が頭ひとつリード。「パイレーツ~」との争いとなるが、興行収入対決でも「トランスフォーマー」が下馬評を覆して勝利を収めている。「パイレーツ~」は前作でも受賞しており、今回は票を集めるのが難しそうだ。「ライラ~」は興行の不振に加え、批評家からの評価も芳しくなかっただけに受賞争いまでは厳しいか。
ボーフォート/レバノンからの撤退 (イスラエル)
ヒトラーの贋札 (オーストリア)
▲Mongol (カザフスタン)
○Katyn (ポーランド)
◎12 (ロシア)
ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞の「ラスト、コーション」、イスラエルの「迷子の警察音楽隊」がエントリーせず、ノミネート確実といわれたカンヌ国際映画祭パルムドール受賞の「4ヶ月、3週と2日」、フランス製アニメ「ペルセポリス」が一次審査でまさかの落選。評価されてしかるべき作品の名前がすべてオミットされてしまった今回の外国語映画賞。興ざめもはなはだしいが、ともかくこの5作品の中から今年の商社が選ばれる。
どの作品も前哨戦でほとんど実績を残していないので、受賞予想は難しい。ただ、近年ヴェネチア国際映画祭出品作品がアカデミー賞で好結果を残していることから、ヴェネチア出品作の「12」が有利という見方もできる。監督はロシアの巨匠ニキータ・ミハルコフ。シドニー・ルメット監督のデビュー作「十二人の怒れる男」を原案とする作品ということで、今年惜しくも監督賞候補を逃したルメット監督を支持する層からの得票も期待できるかも?
対抗は「灰とダイヤモンド」などの巨匠アンジェイ・ワイダの新作「Katyn」。この伝説の巨匠が壇上でスピーチする機会を与えられれば、授賞式は大いに盛り上がるだろう。
◎レミーのおいしいレストラン (ディズニー)
ペルセポリス (ソニー・ピクチャーズ・クラシックス)
サーフズ・アップ (ソニー)
ここは詳しい検討は必要ないだろう。いかにフランスの「ペルセポリス」がよく出来た作品で社会性を帯びた良作であろうとも、「レミーのおいしいレストラン」の勢いには敵わない。この部門は純粋にアニメとしての楽しさが評価される傾向にあり、より娯楽色の強い「レミー」が順当に受賞するだろう。
○I Met The Walrus
Madame Tuti-Putli
◎MÊMe Les Pigeons Vont Au Paradis(Even Pigeons Go To Heaven)
▲My Love(Moya Lyubov)
Peter & The Wolf
○No End In Sight
Operation Homecoming:Writing The Wartime Experience
◎シッコ
Taxi to the Dark Side
War/Dance
マイケル・ムーアというドキュメンタリー作家最高の人気者を擁する「シッコ」が受賞の最右翼だが、沼化するイラク戦争を内部事情を知るインサイダーたちのコメントをもとに構成したドキュメンタリー「No End In Sight」の評判がいい。受賞はこの2作品のうちのどちらかになりそうだが、やはり期待したいのはムーアのスピーチ。前回受賞時は「恥を知れ!ブッシュ!」とやって大反響を巻き起こしたが、今回はどんなスピーチを見せてくれるのか。作品の大人振りからすると、今回は物議をかもすような発言はなさそうだが……。
Freeheld
La Corona(The Crown)
○Salim Baba
◎Sari's Mother
○At Night
Il Supplente(The Subtitle)
◎Le Mozart Des Pickpockets(The Mozart of Pickpocket)
Tanghi Argentini
▲The Tonto Woman