オスカーノユクエ管理人が2015年に鑑賞した映画BEST10です。今年は例年より鑑賞本数が減ってしまったのですが、その分選りすぐって観にいったのでハズレが少なく、お気に入りの映画が多くありました。そのなかから特に印象に残っている10本をご紹介します。
==================================
「オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分」を観る。ドライブ中にアホ上司と戦い、己の正義と戦い、父の亡霊と戦うトム・ハーディを愛でる86分間。なにが起きるでもない短尺に、幾度も心揺さぶられ、自らの人生を見つめ直させられる。類を見ない映画。 pic.twitter.com/ErN3AUouwn
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 6月 30
【10位】
オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
何が起こるわけでもない車中の86分がこんなにエキサイティングとは。「己の正義と戦い」と言えば聞こえはいいが、融通の利かない男が自分の気が済むように行動して家族を悲しみのどん底に突き落とすっていうのだから始末が悪い。体内に流れる亡き父の血に抗うようなその不器用な生き様はなぜか他人事には思えず、ズキズキと心が痛むという不思議な疑似体験。電話口の向こうで声の出演を果たす息子役のトム・ホランドはご存知、新スパイダーマン=ピーター・パーカー。この大抜擢はきっと、この映画での名演が決めてに違いないと勝手に思っている。
==================================
「きっと、星のせいじゃない。」を観る。お涙頂戴の難病悲恋モノという予測はいい意味で完全に裏切られる。アイロニーとユーモアの詰まった偏差値の高い脚本と主演俳優たちのフレッシュな演技がほどよくミックス。いい大人こそが観るべき良作。 pic.twitter.com/LWrsTRfCMi — 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 2月 20
【9位】
きっと、星のせいじゃない。
ヤングアダルト小説が原作、見た目も麗しい若者2人が見つめ合う場面カット、手書き風のお洒落なデザインなどなど。これほど外観と中身にギャップがある映画もめずらしい。安いラブコメ映画をも覚悟して鑑賞に臨めば、作り手の志の高さに目を丸くすることうけあいだ。難病に冒された主人公たちに悲壮感はないものの、彼らには至極まっとうな人生の試練が待ち構えている。
==================================
「シェフ〜三ツ星フードトラック始めました〜」を観る。最初はジョン・ファヴローの映画的コンテキストを面白がって観ていたが、次第に映画の根底に流れる楽しさとライヴ感の虜に。観ている間の幸せといったら。この際、ラストのモヤモヤは忘れよう。 pic.twitter.com/rcu3LXmYzu — 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 3月 24
【8位】
シェフ 三ツ星フードトラック始めました
巨大予算でつくるマーベル映画でよっぽど不自由な思いをしたんでしょう。ジョン・ファヴロー監督のうっぷんが見事に晴らされている痛快映画に仕上がった。儲け主義のオーナーや辛口批評家に対する直截的な物言いこそあるけれど、基本的には根アカなノーテンキっぷりでひたすらに楽しい時間が過ぎていく。別れた奥さんがソフィア・ベルガラで現恋人がスカーレット・ヨハンソンって、中二の夢を投影したかのような潔さには拍手。でもキスシーンのひとつもなしってあたりにツッコミ回避の防御力を見せ付ける。このストーリー展開からはありえないラストは、ここまで自己投影しちゃった挙句の避けられない線だったのだろうな。
==================================
【7位】
アメリカン・ドリーマー 理想の代償
「ロッキー」あり「ゴッドファーザー」あり「フレンチ・コネクション」あり。60〜70年代を彩った名作たちにオマージュを捧げた画作りで映画ファンの心をくすぐりながら、70年代ニューヨークという仁義なきアメリカンドリームの土壌を生々しく描く。とにかくオスカー・アイザック扮する主人公像が新鮮だ。正義と悪について“自分なりの境界線”をもっていて、その線を都合良く自在に引き直すことで自尊心を保っている男。しかもその都合良さを欠片も恥じることなく、自分だけが正義を重んじる常識人を気取っている。これほどたちの悪い下衆もそうはいない。隠し持った銃で死にかけた鹿のの息の根を止める女房のほうがよっぽど出来た人間だ。「ナイトクローラー」のジェイク・ギレンホールと双璧をなす主人公の下衆っぷりにあっぱれ。
==================================
「Mommy/マミー」を観る。画面サイズの伸縮による心情表現やヒットソングの多用など、恐れを知らぬ野心のほとばしりによる気恥ずかしいほどの直喩的な演出は、主人公の無軌道な求愛と重なる。若き天才ドランが今しか撮ることができなかった傑作。 pic.twitter.com/9d9hGsCKnG
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 5月 12
【6位】
Mommy/マミー
「マイ・マザー」と「わたしはロランス」の日本公開でグザヴィエ・ドランという才能に度肝を抜かれたのがわずか一昨年の話。デビュー作「マイ・マザー」での直球な叫びと、「わたしはロランス」の老獪なストーリーテリングは、同じ人間の手によるものとは想像し難かったが、今回の「Mommy/マミー」でその相反する個性が絶妙に絡み合った感。すでに一流監督の域にありながら、ベタな選曲や実験的に過ぎる演出方法などを躊躇なく取り入れるなど、気取らずわが道を行く姿勢がたのもしい。ドランのこの先も楽しみ。
==================================
「サンドラの週末」を観る。身を切られるような没入と、民主主義の縮図を観察するかの俯瞰が交互にやってくる。その一方で、主人公を襲う危機を対岸の火事と眺め、その結末をハラハラと客観視するある意味での愉悦。なんとリアルでエグい映画。すごい。 pic.twitter.com/QvtC7yywTa
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 6月 12
【5位】
サンドラの週末
自分の食い扶ちを守るため、職場仲間にボーナス辞退を迫らなきゃいけないとは、なんと感情移入しやすい地獄設定なのか!説得してまわる主人公のつらさもさることながら、主人公の危機を見ぬふりして金の亡者たらねばならない同僚たちの心の痛みまで、映画はグイグイ押し付けてくる。派手な展開やどんでん返しが待ち受けるわけでもないのにこのハラハラドキドキ感はすごい。難しいこと一切考えず、純粋に映画に見入ってしまった。ある意味ジェットコースタームービー。
==================================
「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」を観る。冷たい血が飛び散るマッドな映画と思いきや、温かい血の通う真っ当な映画だったという嬉しい誤算。女たちの戦い然り、マックスの贖罪然り、作り手の執念然り。強烈なルックの裏に隠された真心に泣く。 pic.twitter.com/AeiiYqhCAl
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 7月 2
【4位】
マッド・マックス/怒りのデス・ロード
予告編のぶっ飛び具合を確認した際には、とんでもない傑作か、あるいは駄作かのどちらかだろうなと。結果は前者だったわけだが、それでもここまでの映画になっているとは予想だにしなかった。まだたったの2回しか体感していないのでアツく語る資格はございませんが、これは間違いなく映画史に残る偉業であり異形映画です。
==================================
「セッション」を観る。音楽に魅せられた2人が辿る道筋に一切の予定調和がないからこそ、愛憎入り交じった視線の交換に心震える。ギリギリを知る者だけが交わせる“会話”に極上のカタルシスを享受。現実との乖離を嘆きつつ、何度でも味わいたい。 pic.twitter.com/7SewVTTI2h
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 4月 20
【3位】
セッション
何かに100%打ち込む人間だけが達する境地。その境地に達した2人だけが交わせる会話。醜くて痛いけど、こんなに饒舌で幸せな時間が他にあるだろうか。一生かかってもこんな経験はできないだろうなという淋しさを味わいつつも、圧倒的なドラムのビートに心を激しく揺らされて、疑似体験だけどしあわせ・・・と昇天。
==================================
「ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション」を観る。トムの全身躍動を愛でる喜びはもはや、ジャッキー・チェン映画に感じていた愛のレベルに昇華。さらに語り口の饒舌と情感豊かな演出たるや。難敵をやりこめるラストに痺れまくり。前作超え。 pic.twitter.com/2uUa0cI1lS
— 映画情報 オスカーノユクエ (@oscarnoyukue) 2015, 8月 9
【2位】
ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション
毎回キャラの立った監督を連れてくる新鮮味が醍醐味の本シリーズ。正直、「アウトロー」でもタッグ済みのクリストファー・マックァリー監督という人選にはガッカリしていた。なのに、シリーズ最高傑作!と唸った前作をも軽々と超えてくるとは恐れ入りました。
何より素晴らしいのはヒロインの人物造形。静止画像では伝わりにくいレベッカ・ファーガソンの魅力は、キビキビとした動きやさりげない仕草でこそ生きてくる。そこに命を賭して商売敵を救う情感たっぷりのシークエンスや、スパイ稼業から逃れられない哀しい宿命まで描きこまれるのだから、これはもうシリーズ最強のヒロイン、いや、トム・クルーズ映画史上最高のLove Interestと銘打っていいのではないかと思う次第。次回作にも登場とのことで嬉しいかぎり。
==================================
【1位】
バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)
まるでワンカットのように見えるカメラ、不規則なリズムを刻むBGMのドラム、意味深に引用されるカーヴァーの戯曲。表層だけ見れば気取った映画と突き放したくもなるが、反面、ハリウッドへの浅はかな風刺やパロディに満ち満ちているというギャップがまず楽しい。凝った表層は決して下世話ばなしの取り繕いコーティングではなく、風刺する対象とは真逆の精神で作られる映画とはどんな姿なのかを体現しようという野心の表れだ。恐れを知らぬチャレンジ精神がタブーを打ち砕き、アカデミー賞まで受賞してしまうという結果に快哉を叫ばずにいられようか!
==================================