スパイスなしの口当たりよい無難料理 — 「幸せのレシピ」レビュー
軽快な音楽、スタイリッシュな美術、お洒落な会話、そして美男美女。どこかで見たようなお決まりのシーンを羅列し、ロマコメの王道をこれでもかと追求した結果がこの何ともむず痒くなるような居心地の悪さだ。撮影も編集も素晴らしい仕事を見せているだけに、脚本の弱さと演出の底の浅さが際立つ。この分野に不慣れなスコット・ヒックス監督が必要以上にジャンル映画に染まろうとした結果、器用さだけが目立つ、全くスパイスの効いていない口当たりがいいだけの作品に仕上がってしまった。