寓話的アプローチで人間の本質描く — 「リトル・チルドレン」レビュー
不気味に響き渡る電車の警笛が、登場人物たちの不安定な精神状態を端的に表現する。どこかから何かを運び、そして運び去って行くそれは彼らの心の奥底にある欲望であり、警笛は彼らの声にならない叫び。映画は“大人になりきれない子供たち”を主人公に、人間の愚かな(しかし根源的な)欲望について描く。
トッド・フィールド監督はありがちな郊外の不倫メロドラマを、寓話的なアプローチで人間の本質に迫る見事なドラマに昇華した。小児性愛に悩む中年を物語の中軸に据えるアイデアも欲望というテーマをより浮き彫りに。小児性愛者を演じるジャッキー・アール・ヘイリーがこの寓話の中で異彩を放ち、監督の抜擢に応えた。
艶かしいケイト・ウィンスレットはさすがの存在感だが、燻る情熱を抑えきれずにいる主夫をピュアに演じたパトリック・ウィルソンもよい。