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[Venice 2007] 第64回ヴェネチア国際映画祭コンペ作品解説 Vol.2

アカデミー賞 記事:2007.08.16

I’m Not There
(アメリカ)135’
監督:トッド・ヘインズ
脚本:トッド・ヘインズ
出演:ヒース・レジャー、ケイト・ブランシェット

伝説のシンガー、ボブ・ディランの半生を描いた伝記ドラマ。この作品がユニークなのは、主人公のディランを7人の役者がそれぞれ演じることだ。すでにYouTubeではケイト・ブランシェット演じるディランの映像が先行して配信されているが、その映像を見ただけでも作品がかなり野心的なものであることがわかる。全米の批評家に激賞された前作「エデンより彼方に」でヴェネチア参戦し、ジュリアン・ムーアの女優賞と特別功労賞を受賞している。相性のよいヴェネチアで再び花開く可能性は高い。


The Sun Also Rises
(中国/香港)116’
監督:チアン・ウェン
脚本:チアン・ウェン、スー・ピン
出演:ジョアン・チェン、アンソニー・ウォン

監督作「鬼が来た!」で00年のカンヌで審査員特別グランプリを受賞したチアン・ウェンの新作。時と場所を越えた4つのエピソードが入り混じりながら進行する愛の物語で、音楽を久石譲が担当する。ヴェネチアは昨年中国映画の「長江哀歌(エレジー)」に金獅子賞を与えたばかりとあって、2年連続中国作品の受賞は難しいか。

Help Me Eros
(台湾)107’
監督:リー・カンション
脚本:リー・カンション
出演:リー・カンション、Yin Shin

ツァイ・ミンリャン監督作品で主演を務めてきたリー・カンションの監督第二作。前作「迷子」で高い評価を受け、二作目で早くもヴェネチア参戦の切符を手にした。カンション扮する若き株式ブローカーが取引に失敗して一文無しになった後、大麻を常用するようになり、次第にエロティックなファンタジーの世界に溺れていく……。師匠とも言えるミンリャンは94年に「愛情萬歳」で金獅子賞受賞経験あり。今回は製作に回ってサポートとあって、カンションにとっては頼もしい存在と言えそう。

La Graine et le mullet
(フランス)151’
監督:アブドラティフ・ケシシュ
脚本:アブドラティフ・ケシシュ
出演:Sabrina Ouazani、アリス・ユーリ

役者としても活躍する監督のケシシュは、前作「L’Esquive」がセザール賞作品賞、監督賞、脚本賞を受賞した若き才能(「L’Esquive」はセザール賞作品賞受賞作の中では唯一日本未公開。何故?)。ヴェネチアには00年に「La Faute a Voltaire」を送り込み、Cinema for Peace Awardを受賞している。すでにヴェネチアでの実績もありとのことで大きな躍進が期待できそうだ。

ラスト、コーション/色・戒
(アメリカ/台湾)135’
監督:アン・リー
脚本:ワン・ホエリン、ジェームズ・シェイマス
出演:トニー・レオン、タン・ウェイ

アン・リー監督の前作「ブロークバック・マウンテン」もこのヴェネチアの地で金獅子賞を受賞して一躍アカデミー賞戦線のトップコンテンダーに。作品賞こそ逃したもののリー監督に監督賞をもたらした。今回の作品はアメリカ資本が入っているものの、キャストも舞台も中国でもちろん台詞も英語に非ず。アカデミー賞では外国語映画部門に属することになるが、再びヴェネチアで戴冠となればリー監督のネームバリューも手伝って作品賞戦線でも堂々の有力コンテンダーとなるだろう。
アイリン・チャンの自伝的短編小説『色・戒』が原作。40年代の香港と上海を舞台に、トニー・レオンとタン・ウェイの愛憎物語が描かれる。ウォン・カーウァイ作品を髣髴とさせるプロットだが、カーウァイと違って雰囲気に流されないキッチリとした作品の構成力を持つリーだけに見所ある愛の物語が見られそうだ。

It’s a Free World…
(イギリス/イタリア/ドイツ/スペイン)96’
監督:ケン・ローチ
脚本:ポール・ラヴェルティ
出演:ジュリエット・エリス、キアストン・ウェアリング

三大映画祭で多彩な受賞歴を誇るケン・ローチ監督の新作。昨年のカンヌ国際映画祭では「麦の穂を揺らす風」でパルムドールを受賞し、ますますキャリアに磨きがかかっている。今回の作品では不法移民の労働問題に焦点を当てているとのことで、ローチ監督らしい一般市民の生活に根付いた物語が展開されそうだ。ちなみにローチ監督のヴェネチアでの実績は、86年に「Fatherland」でUNICEF Award受賞、96年の「カルラの歌」、01年の「ナビゲーター ある鉄道員の物語」で金獅子賞にノミネートされている。カンヌ制覇の余波でヴェネチアでも戴冠なるか?

L’ora di punta
(イタリア) 96’
監督:ヴィンチェンゾ・マーラ
脚本:?
出演:ファニー・アルダン、Michele Lastella

監督のヴィンチェンゾ・マーラはこれまで6本の作品を発表するも、まだ日本での公開作品はなし。どんな作風の監督なのか不明だが、ヴェネチアでは01年の「Tornando a casa」、04年の「Vento di terra」でいくつかの賞を受賞している。地元イタリアでも01年にダヴィッド・デ・ドナテッロ賞の新人監督賞にノミネートされるなど期待の新星だ。

スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ
(日本)121’
監督:三池崇史
脚本:三池崇史、NAKA 雅 MURA
出演:伊藤英明、伊勢谷友介、石橋貴明、桃井かおり
2007 SUKIYAKI WESTERN DJANGO FILM PARTNERS.

黒澤明が生み出した傑作時代劇がイタリアに輸入され、“マカロニ・ウェスタン”が誕生した。そして今、その西部劇が再び日本に逆輸入され、“スキヤキ・ウェスタン”が誕生する。というコンセプトで生まれたのが本作。壇ノ浦の戦いから数百年後に埋蔵金を巡って平家と源氏が激しい闘争を繰り広げ、そこに1匹狼のガンマンが介入する。トンデモなプロットで台詞は全編英語、出演者も多様で監督は三池崇史。何かを期待しないほうがおかしい。いかんせん由緒ある映画祭で最高賞を狙える類の作品ではないが、日本映画の枠を超えた大型エンタテインメントとして現地で旋風を巻き起こしてほしいものだ。

12
(ロシア)153’
監督:ニキータ・ミハルコフ
脚本:ニキータ・ミハルコフ
出演:ニキータ・ミハルコフ、セルゲイ・マコベスキ

ロシアの巨匠ミキータ・ミハルコフにより、名作「12人の怒れる男」が甦る。リメークという位置づけではないものの、プロットはほぼ同じ。独特の映像表現で評価されるミハルコフが陪審員たちのドラマをどう映像化するのか。ミハルコフはすでに91年の「ウルガ」で金獅子賞を受賞済み。94年の「太陽に灼かれて」ではカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞している。「暴走機関車」などで知られる監督のアンドレイ・コンチャロフスキーは兄。

Il dolce e l’amaro
(イタリア)98’
監督:アンドレア・ポルポラティ
脚本:?
出演:ファブリツィオ・ギフーニ、ルイジ・ロ・カーショ

イタリアの新鋭アンドレア・ポルポラティ監督の新作。脚本家としては15年以上のキャリアを持つポルポラティだが、監督デビューは01年とまだキャリアは浅い。日本では脚本を担当した「クルセイダーズ」が紹介されているが、監督作は全て未公開で作風は不明。

Les Amours d’Astree et de Celadon
(フランス/イタリア/スペイン)109’
監督:エリック・ロメール
脚本:エリック・ロメール
出演:アンディ・ジレ、セシル・カッセル

フランス映画界の重鎮エリック・ロメール監督3度目のヴェネチア参戦。初参戦の86年に「緑の光線」でいきなり金獅子賞を受賞すると、98年の「恋の秋」では金のオゼッラ賞(脚本賞)を受賞している。01年にはキャリアを称える生涯金獅子賞を受賞しており、まさにミスター・ヴェネチア。今回も無冠に終わる可能性は低そうだ。


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