2007 アカデミー賞 監督賞 有力コンテンダー
近年オスカーとの直結度が増してきたヴェネチア国際映画祭、さらに最重要映画祭の1つであるトロント国際映画祭の結果が出たところで、監督賞レースに大きな変動が。現時点でトップコンテンダーに躍り出たのは、トロントで観客賞受賞の「Eastern Promises」で激賞されたデヴィッド・クローネンバーグだ。地元カナダでの勝利に加え、全米の批評家からも惜しみない賛辞を受けているだけに初のオスカー候補はかなり現実味を帯びてきたと言っていい。もともとアカデミー賞向きでない個性の強い監督だが、その豊富なキャリアがそろそろ評価されていい頃。昨年も「ヒストリー・オブ・バイオレンス」で有力コンテンダーとして名乗りを上げるも落選しており、同情票も期待できる。
「In the Valley of Elah」が全米公開され、マズマズの評価を勝ち取ったポール・ハギスだが、ヴェネチアでの無冠に加え、BoxOfficeでもライバル(「Eastern Promises」)に大きく水をあけられるなど苦戦。ここ数年の活躍ぶりをやっかむ勢力もありそうで、再度のオスカー候補は厳しい情勢だ。
ヴェネチア、トロントで無冠に終わった「Atonement」だが、まだまだBUZZは鳴り止まない。一部では期待ほどの出来にないとの声もあるが、スケールの大きな物語と美しい映像はもろアカデミー好みと言えそう。前作「プライドと偏見」で華麗なデビューを飾ったジョー・ライトの候補に期待がかかる。
若手では、「サンキュー・スモーキング」に続いて才能を爆発させそうなジェイソン・ライトマン(Juno)に注目。父親アイヴァンが未だ成し遂げていないオスカー候補を先に実現させるか。同じくフォックス・サーチライト配給によるコメディ「The Savages」のタマラ・ジェンキンスにも注目だ。これが5作目となる女流監督だが、キャリアは15年以上と豊富。いきなりの候補を実現するには批評家からの熱烈な支持が必要だが、前評判の高さからすると期待は十分だ。他、女優としても評価高いサラ・ポリーにもチャンスあり。作品は批評家から熱い支持を受けており、批評家賞で大きくピックアップされるポテンシャルがある。