映像も物語もひたすら堅く、退屈 ― 「さらば、ベルリン」レビュー
第2次大戦終結直後、ベルリンを統治するソ連とアメリカが互いの思惑を成就しようと陰謀をめぐらせる。これに世を憂う記者、謎の娼婦とその愛人が絡む物語は、筋書きだけ見ればかなり興味深い。だが、ソダーバーグが古典映画のスタイルを模倣することにこだわった結果、いささか退屈な時間を強いられる映画に仕上がった。
ソダーバーグは、物語の中心にクルーニーとブランシェットの悲劇的恋愛が横たわっているにも関わらず、ロマンチックな要素を故意に廃し、戦後の蠢く陰謀に焦点を当てる。映像が堅い上に物語まで堅くされては見ているほうも厳しいというもの。観客は登場人物に感情移入することを許されず、淡々と進む物語をただ咀嚼するほかない。ソダーバーグこだわりの古典映画のオマージュに心酔できれば楽しめるのだろうが……。