技術レベルは高いが、作品の構成にブレがあるのが惜しい ― 「キングダム/見えざる敵」レビュー
惜しい。技術レベルは非常に高いが、作品の構成にブレがある。凝ったディテール描写とドキュメンタリー風のカメラがリアリティを演出するものの、基本はキャラクターが立った娯楽ムービー。ポール・グリーングラスを引き合いに出す評もあるが、正確にはやはり製作を務めるマイケル・マンのタッチに似ている。
オープニングで米国とサウジアラビアの石油を介した関係を解説するあたり、単なる娯楽作には終わらないという作り手の強い意思が感じられる。リアリティ重視の作りもその意思の延長線上にあるものだろうが、いかんせん時折顔を見せるご都合主義が全てを無に返してしまう。飛び交う銃弾が主人公たちを避けて通ったり、ドラマを帰結させるに相応しい人物だけが命を落としたり。リアルに徹し切れなかった部分が映画の性格自体を疑わせてしまった。惜しい。