話題の「ノーカントリー」を観た!さて、オスカーポテンシャルは……?
先週全米で封切られ、批評家から絶賛を浴びている「ノーカントリー」(原題:No Country for Old Men)。日本では来年3月公開予定の本作をいち早く鑑賞する機会に恵まれた。作品のレビューは後日掲載するとして、肝心のオスカーポテンシャルは……?
まず言えるのは、作品のキーパーソンとなる冷徹な殺し屋を演じるハヴィエル・バルデムの助演男優賞ノミネートは100%間違いないということ。巷でもすでに当確印と噂されているようだが、その評価に誤りはない。バルデムの圧倒的な存在感が作品全体を支配し、鑑賞後もしばらくその余韻で体が震える。受賞の可能性もかなり高いだろう。
主演部門で推される予定のジョシュ・ブローリンだが、役柄的には助演部門でエントリーしてもおかしくない。殺し屋に追われながらも元ベトナム従軍兵としての意地を見せるハンター役を好演しているが、強豪揃う主演男優部門でノミネートされるまでのパワーはないか。
むしろ役柄的にはトミー・リー・ジョーンズにうまみがある。ただし、ジョーンズには今年もう一本「In The Valley Of Elah」があるので、票はそちらに流れるだろう。
紅一点のケリー・マクドナルドは、狙われる夫を健気に心配する若妻役。ラスト近くに印象的な見せ場が用意されており、相手次第ではノミネートのチャンスもある。
作品賞部門でのノミネート確率は80%くらいか。クオリティは圧倒的で、これまでのコーエン作品の中でも随一の出来。ただし、示唆に富んだ物語はやや難解で、批評家好みするきらいも。明快な物語を好むアカデミー会員の中には敬遠する輩もいるかもしれない。それでも、ここ数年はアート志向の強いインディ作品が数多く取り上げられている現状を思えば、「ノーカントリー」がノミネートされる可能性は決して低くない。ノミネートを逃すとすれば、ややきつめのバイオレンス描写が嫌われた場合か。
他、脚色賞と撮影賞はノミネート当確か。ロジャー・ディーキンスによる撮影は見事の一言で、オープニングから引き込まれる。受賞もあっていい。