辛辣なジュノの口撃が快感 ― 「JUNO/ジュノ」レビュー
ジュノの辛辣かつ的を射たユーモアと、ちょっとズレてる妙なキャラクター描写が微妙な空気を生む秀作コメディ。見た目どこにでもいるティーンエイジャーのジュノが、持ち前の度胸とオリジナリティで大人たちをぶった斬っていく様は痛快そのもの。ジュノに斬られる側に感情移入しつつ、彼女に斬られることにも快感を覚えてしまう。この映画の魅力はそんなところにあるのかもしれない。
キャラクターたちは様々なアイテムで肉付けされているが、これも人格を形成するのは人の心ではなく周りを取り囲むモノたち、という痛烈なメッセージが見て取れる。“椅子”に始まり“椅子”に終わるジュノの独白も、モノで溢れた現代へのアンチテーゼという一面を持つ。
そんな中、母になるために生まれてきた、と実感しながら生きるジェニファー・ガーナー演じるヴァネッサは、モノの要素を否定する存在。彼女の純粋な母性は美しく、感動的だ。演じるガーナーもうそ臭さのない無垢でこれを表現している。
センチメンタルな要素に全く左右されることのないストーリーテリングは、先を読むのが全く不可能なほどオリジナリティに溢れている。初脚本にして本作を書き上げたディアブロ・コーディは恐るべき才能だ。コディが作り上げた無敵のティーンエイジャー、ジュノを演じたエレン・ペイジはもちろんのこと、彼女のお相手を演じたマイケル・セラの好演も見逃せない。