外国語映画賞最終エントリー作品紹介
Beaufort(イスラエル)
監督:ジョセフ・セダー
2000年5月、イスラエル軍は22年に渡り占領してきたレバノン南部からの撤退を敢行した。イスラム原理主義のテロ活動抑制を目的に続けられてきた占領は、900名以上のイスラエル兵士の命を犠牲にしてきた。常に物議を醸してきたこの占領に意味はあったのか。ベルリン国際映画祭監督賞を受賞。東京国際映画祭グランプリ受賞「迷子の警察音楽隊」がエントリー資格を失ったため、繰り上がりでイスラエル代表の座を手にした。
ヒトラーの贋札(オーストリア)
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
ナチス・ドイツが行った国家による史上最大の紙幣贋造事件。この驚くべき歴史的事実に隠された、ユダヤ人技術者たちの正義をかけた戦いの物語。生きるためにナチスに協力せざるをえなかったユダヤ人技術者たちの苦悩、そしてナチスの思惑を阻止するための陰ながらの抵抗。彼らのくだした決断とは?ドイツとオーストラリアの合作で、ドイツ・アカデミー賞作品賞含む7部門でノミネート。07年のベルリン国際映画祭コンペにも出品している。
The Year My Parents Went on Vacation(ブラジル)
監督:カオ・ハンブルガー
1970年、独裁政権下のブラジル。10才のマウロは両親と別れ、祖父のもとに預けられるが、程なく祖父が心臓発作で他界してしまう。行き場をなくしたマウロを救ってくれたのは、ユダヤ人コミュニティで生活する少年シュロモ。マウロは友達とともに新しい世界を体験しながら両親の帰りを待つ。
Days of Darkness(カナダ)
監督:ドゥニ・アルカン
「アメリカ帝国の滅亡」「モントリオールのジーザス」などで知られるカナダの巨匠ドゥニ・アルカン監督最新作。アルカンは03年、「みなさん、さようなら」で外国語映画賞を受賞。ちなみに同年の同部門には「たそがれ清兵衛」もノミネートされていた。デスパレートな公務員ジャン・マルク・ルブランは現実から逃避するために、自分がヒーローとなって数々の冒険を繰り広げる様を夢想する。
題名のない子守唄(イタリア)
監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
「ニュー・シネマ・パラダイス」のジュゼッペ・トルナトーレ監督最新作。北イタリアのとある都市にやってきた移民の女、イレーナ。裕福な一家のメイドとして雇われたイレーナには、ある秘密があった。トルナトーレがサスペンスフルな演出で新境地を見せる。イレーナを演じたクセニア・ラパポルトの演技は圧巻。地元イタリアのダヴィッド・デ・ドナテッロ賞で作品賞含む主要5部門を独占した。
Mongol(カザフスタン)
監督:セルゲイ・ボドロフ
13世紀、ロシアを含む世界の半分を征服したモンゴルのチンギス・ハーン。この伝説の英雄の若き日に迫る。「ボラット」で世界中にその名を轟かせてしまったカザフスタンが、隣国モンゴルの英雄伝を映像化。監督のセルゲイ・ボドロフは「コーカサスの虜」や「ベアーズ・キス」、「イースト/ウェスト 遙かなる祖国」の脚本家として知られる。若きチンギス・ハーンを演じるのは我らがニッポンの浅野忠信。
Katyn(ポーランド)
監督:アンジェイ・ワイダ
第二次大戦中のポーランドを舞台に、ポーランド人4家族に訪れる苦難の日々を描く。大戦中、ソビエト兵に捕らえられて拷問を受ける父、戦後の微妙な立場に置かれたポーランドで育つ子供たち。戦争が生み出した家族の世代間ギャップが悲劇を生む。「廃とダイヤモンド」ら“抵抗三部作”などで知られるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督8年ぶりの新作。アカデミーは99年、ワイダに特別賞を贈っている。
12(ロシア)
監督:ニキータ・ミハルコフ
91年の「ウルガ」でヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞、94年の「太陽に灼かれて」でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞しているロシアの巨匠ミキータ・ミハルコフにより、名作「12人の怒れる男」が甦る。リメークという位置づけではないものの、プロットはほぼ同じ。独特の映像表現で評価されるミハルコフが陪審員たちのドラマをどう映像化するのか。「暴走機関車」などで知られる監督のアンドレイ・コンチャロフスキーは兄。
The Trap(セルビア)
監督:Srdjan Golubovic
セルビアの中流家庭を襲う悲劇。心臓の欠陥で倒れた小学生の息子を助けるために多額の手術費を必要とする男の元に、あるオファーが舞い降りる。ある男を殺せば手術費を負担するというのだ。子供の命を救うためならば、他人の命を奪ってもいいのか?父として、人間として、男は苦悩する。トロント国際映画祭のコンテンポラリー・ワールド・シネマ部門にも出品されたドラマ。