原作をだいぶ切り詰めたのに冗長なファンタジー ― 「君のためなら千回でも」レビュー
カレイド・ホセイニの原作にほぼ忠実な映像化。原作は、共産勢力の侵略とその後タリバン政権により破滅的な支配を受けたアフガンを舞台に、2人の少年の友情を綴った感動の物語で、シーア派とスンニ派の宗教派閥間差別、アフガンの古典的価値観、父と子の愛情と葛藤、罪悪感、償い、許しなどなど、盛りだくさんの内容が語られる。
「25時」などの名脚本家デヴィッド・ベニオフは間違いのない仕事をし、監督のマーク・フォースターもシビアな時代背景の中で語られる“ファンタジー”である原作を的確に映像化している。ただ、いかんせん大長編の原作を2時間弱の枠に押し込めるには無理があった。個々のエピソードが際立つ作りのため、場面場面のつなぎがやや唐突でつぎはぎ感が否めず。ファンタジーの割には構成にも語り口にもなめらかさがなく、感動のラストにつなげるまでが冗長に感じられる。
3時間超の長編に仕上げるか、TVシリーズにするんでもしなければ、原作の持つ魅力を伝えきるのは難しく、2時間枠の映画としては最善を尽くしたかなという印象。