[2008 Venice] コンペティション部門受賞予想
毎年恒例当たらない受賞予想を今年もお届け。ここ数年アカデミー賞に直結する結果が出ているヴェネチアだが、今年はどうなるのか。結果は日本時間9月8日(月)に発表される。
日本映画3作品の出品に沸く今年のヴェネチアだが、その実情はといえば、昨年11月から4ヶ月に渡って決行されたWGAストの影響でアメリカ映画の出品が減り、コンペ部門の顔ぶれもややインパクトに欠ける。映画祭側は今年のテーマに「新しい才能の発掘」を掲げているが、昨年の豪華ラインナップに比べるとネームバリュー的には明らかに見劣りするラインナップ。狙い通り新しい才能が開花することを期待したい。
さて、現地で金獅子賞最右翼と評判なのが、ヴェネチアと相性抜群の北野武監督作「アキレスと亀」。武は過去に「HANA-BI」で金獅子賞、「座頭市」で銀獅子賞を受賞しており、今回のメンバーの中では群を抜いた実績を持つ。ヴェネチアの過剰なまでの武崇拝は、武に2回目の金獅子賞を与える可能性十分だ。ただ、肝心の作品の出来は近年の武映画とさほど変わらず、「HANA-BI」「座頭市」と比較するとだいぶ見劣りする。この作品が重要賞を受賞するようだと、ヴェネチアの武崇拝はかなり盲目的と言わざるを得ない。
栄誉金獅子賞を受賞するなど、ヴェネチアからは武に勝るとも劣らぬ評価を受けているのが宮﨑駿監督。原則として世界初公開であること、というコンペ部門の選出条件を曲げてまで招待されただけに、「崖の上のポニョ」が何かしらの賞にひっかかる可能性が高い。前作「ハウルの動く城」は技術賞を受賞しているが、今回はそれ以上の成果もありうる。「スカイ・クロラ」で初参戦の押井も海外では評価・知名度ともに高くチャンスあり。ただ、今回は格上評価のミヤザキの存在が金獅子への行く手を阻みそう。
注目のアメリカ勢は、小粒ながら面白い作品が揃った。中でも最有力視されているのが、ギレルモ・アリアガ監督の監督デビュー作となる「The Burning Plain」。贖罪を求めて彷徨う人々の姿を描いた得意のアンサンブル劇だ。脚本の質の高さは保証付なので、後はアリアガの演出力が鍵となる。
ギレルモ・アリアガ監督(右)
ジョナサン・デミ監督久々の新作「Rachel Getting Married」も前評判が高い。アン・ハサウェイ扮する問題児が家族の関係に緊張を生み、やがてより強い結束をもたらすというドラマ。「リトル・ミス・サンシャイン」を思わせる家族劇で、ヴェネチアよりもアカデミー賞向きと言えるかもしれない。半引退状態だったデブラ・ウィンガーの復帰も話題で、ぜひ女優賞に選んでいただきたいところ。
「Rachel Getting Married」
作風がヨーロッパ向きなのはダーレン・アロノフスキー監督のほうだが、新作「The Wrestler」は、プロットを読む限り彼の作品としてはかなり異色。ベテランのプロレスラーが壊れかけた体を引きずりながら巡業に精を出し、やがてかつてのライバルとの宿命の対決(興行)を迎えるまでを描く。金獅子賞よりも、ミッキー・ロークの男優賞のチャンスが大きいか。
「The Wrestler」
第65回ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門受賞予想
金獅子賞
崖の上のポニョ(監督:宮崎駿/日本)
銀獅子賞
ギレルモ・アリアガ(The Burning Plain/アメリカ)
男優賞
ミッキー・ローク(The Wrestler/監督:ダーレン・アロノフスキー/アメリカ)
女優賞
デブラ・ウィンガー(Rachel Getting Married)