アカデミー賞ノミネーション予想 [監督賞]
監督賞ノミネーション予想
●ノミネート予想
- ダニー・ボイル(スラムドッグ$ミリオネア)
- クリストファー・ノーラン(ダークナイト)
- ガス・ヴァン・サント(ミルク)
- デヴィッド・フィンチャー(ベンジャミン・バトン 数奇な人生)
- クリント・イーストウッド(チェンジリング)
●逆転を狙う有力コンテンダー
- ロン・ハワード(フロスト×ニクソン)
- ダーレン・アロノフスキー(The Wrestler)
- アンドリュー・スタントン(ウォーリー)
- クリント・イーストウッド(グラン・トリノ)
- マイク・リー(Happy-Go-Lucky)
- ジョナサン・デミ(レイチェルの結婚)
- ジョン・パトリック・シャンレイ(ダウト あるカトリック学校で)
- スティーヴン・ダルドリー(愛を読むひと)
- サム・メンデス(レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで)
- ウッディ・アレン(それでも恋するバルセロナ)
今年の監督賞部門は、ダニー・ボイルやデヴィッド・フィンチャー、クリストファー・ノーランなど、異色のキャリアを持つ映像作家たちが主役を競う。それぞれオリジナリティの強い作風を保ちながら、娯楽映画も手がけて成功を収めてきた監督たちだ。本来アカデミー賞とは無縁に思えた彼らが揃ってアカデミー賞を競うという異常事態だけに予想が難しい。
前哨戦をリードしたダニー・ボイル(スラムドッグ$ミリオネア)、ガス・ヴァン・サント(ミルク)あたりのノミネートは堅そうだが、他は波乱があっておかしくない。
娯楽映画の定義を変えるほどのインパクトを与えたクリストファー・ノーラン(ダークナイト)はノミネートされて然るべきだが、娯楽映画であること、続編であることのハンデがつきまとう。大きなチャレンジを成就させた偉業は受賞にも値するが、アカデミーはどんな判定を下すのか。
デヴィッド・フィンチャー(ベンジャミン・バトン/数奇な人生)も映像化困難な素材を見事に料理した点を評価されていい。プロモーションビデオ監督という出自が軽く見られる傾向にあるが、初のオスカー候補を勝ち取って偏見を拭い去りたい。
有力コンテンダーの中では唯一”ハリウッド的”な監督であるロン・ハワード(天使と悪魔)だが、すでに一度受賞していることと、近年特に職人的なイメージが付着していることが得票を妨げそう。次回作は「ダ・ヴィンチ・コード」の続編「天使と悪魔」で、キャリアがやや娯楽映画にシフトしている点も減点材料か。
この上位5人が監督組合賞、ブロードキャスト批評家賞でノミネートされており、ほぼ当確と言われているが、果たしてそうすんなりいくか。作品賞部門に比べると他が入り込む余地はありそうだが、とって代わる強力なコンテンダー不在というのも事実。逆転の可能性を残すコンテンダーは多数いるが、誰か1人を選ぶのは難しい状況だ。
娯楽路線はそっちのけで完全に我が道をいくダーレン・アロノフスキー(The Wrestler)は、近年アカデミー賞と相性のいいヴェネチアで金獅子賞受賞という実績が好材料。ただし、賛辞は主演のミッキー・ロークに対して集中しているきらいがあり、演出評価のBUZZが広まりきっていないのが気がかり。
常連クリント・イーストウッドは今年も質の高い2本の作品でオスカー戦線にエントリー。どちらも批評家の評価高く、ノミネートの資格がある。ただし、近年のイーストウッド作品の中で突出した評価を受けているわけではなく、両作品ともパンチに欠ける。票割れの危険も大きく、今回は見送りが妥当との見方が一般的。ただし、「グラン・トリノ」は主演男優賞、「チェンジリング」は監督賞という住み分けが出来ている空気もあり、ダブル・ノミネートの可能性がなきにしもあらず。
アカデミー会員の間にファンの多いマイク・リー(Happy-Go-Lucky)の3度目の候補も可能性あり。ただし今回の作品はコメディであり、過去2度の候補作(「秘密と嘘」「ヴェラ・ドレイク」)ほど前評判は高くない。
久々に第一線にカムバックしたジョナサン・デミ(レイチェルの結婚)も無視できない存在。作品の規模は小さいが、演技賞に多数有力コンテンダーを送り込んでおり、デミの演出力が再評価されておかしくない。
この中から逆転があるとすれば、やはりイーストウッドということになる。「チェンジリング」の製作をロン・ハワードが務めており、自分の代わりに候補入りするのがイーストウッドならあきらめもつくのでは……。