[最終受賞予想」 作品賞
作品賞
◎スラムドッグ$ミリオネア(フォックス・サーチライト)-下馬評◎
ベンジャミン・バトン 数奇な人生(パラマウント)
ミルク(フォーカス・フィーチャーズ)
フロスト×ニクソン(ユニバーサル)
○愛を読むひと(ワインスタイン・カンパニー)
製作者組合賞、ブロードキャスト批評家賞、ゴールデン・グローブ賞、俳優組合賞アンサンブル演技賞(作品賞)ら前哨戦の主要賞を総なめにした「スラムドッグ$ミリオネア」に逆らう理由はない。それでも重箱の隅をつつくような形にはなるが、「スラムドッグ~」に不利なデータを探ってみよう。
●独立系映画
配給のフォックス・サーチライトはこれまでに「サイドウェイ」「JUNO/ジュノ」などを作品賞候補に送り込んできたが、全てノミネート止まり。批評家からの支持は絶大にも関わらず、独立系作品であることが受賞の妨げになってきた。
●外国を舞台とした作品
本作は100%インドを舞台としたほぼ外国語作品。アメリカ以外を舞台とした映画の受賞は「ラスト・エンペラー」まで遡らなければならず、決して有利なデータとは言えない。インドの現状を描いているが、”しょせんは外国人が描くインド”との厳しい指摘もあり、否定派も少なくない。
●前哨戦を”勝ちすぎ”
各地の批評家賞では取りこぼしも多かったが、主要な前哨戦はほぼ独占した。前哨戦終盤ではもはや独走状態となっており、これが逆にアンチを生み出す土壌とならないとは限らない。
●ダニー・ボイル監督
監督のボイルは「トレインスポッティング」の成功後、鳴り物入りでハリウッドに招聘されるも結果を出せなかった。自国に戻るや「28日後…」などの秀作を送り出しているように、ハリウッドとは全く水が合わない存在。ハリウッド批判発言も躊躇わない人物の映画に多くの票が集まるか。
これらの要素が重なって得票を阻んだ場合に限り、「スラムドッグ」落選のシナリオもないとは言えない。その場合、アカデミーはハリウッドらしいビッグバジェット作品(ベンジャミン・バトン)、あるいはワインスタイン兄弟が熱心に得票キャンペーンを展開する「愛を読むひと」ににオスカー像を与えるだろう。受賞にふさわしいのは「ミルク」だが、ゲイ・ムービーの受賞をあからさまに否定した過去(ブロークバック・マウンテン)のあるアカデミーがほんの数年で態度の”変化”を見せるのかは怪しいところだ。いかに変化がキーワードの年とはいえ、「ミルク」の逆転は難しそうだ。
結論
「バトン」もすばらしい映画だが、前哨戦で十分すぎる実績を残した「スラムドッグ」には逆らえない。