最高に楽しい企業間スパイ戦争 - 「デュプリシティ/スパイは、スパイに嘘をつく」レビュー
二転三転するコン・ムービー、なんていう紹介はこの映画には失礼。物語を何回も転ばせて魅せようと頑張る浅はかな意図はこの映画にはない。ギルロイの脚本には描きたいテーマがはっきりと存在し、観客の予想を最後の最後まで裏切る展開はオマケのようなものだ。ギルロイが描きたかったのは「企業間スパイ戦争」と「スパイ同士の恋」。この2つを同時に、しかも完璧に描くという離れ業をやってのけている。
役者陣のアンサンブルも見事。主演の2人はもちろんのこと、脇を固めるポール・ジアマッティ、トム・ウィルキンソン、トーマス・マッカーシーらが肩の力を抜いて楽しげに役を演じている。中でも出色なのが、クライヴ・オーウェンの色仕掛けにコロッとまいってしまう女性社員を演じるキャリー・プレストン。コミカルさと深い感情表現を合わせ持つなかなかの演技派。今後の注目株だ。