[受賞最終予想] 長編アニメーショ映画賞
ピクサーの記念すべき10本目の長編劇場映画「カールじいさんの空飛ぶ家」は、北米だけで2億9300万ドルを稼ぎ出す大ヒットを記録。ピクサー史上2番目(1位は「ファインディング・ニモ」の3億3900万ドル)の成功作となったが、作品のクオリティもレベルの高いピクサー作品の中に混じって1,2を争う高評価となっている。今年は作品賞ノミネート枠が10に拡大されたことで、アニメ作品にも作品賞候補のチャンスが生まれ、本作も見事にノミネートを勝ち取った。「美女と野獣」以来2度目の作品賞候補という偉業を達成した本作は、この部門では頭2つ3つ抜け出した存在だ。よほどのことがない限り受賞を逃すことはないだろう。
重箱の隅をつつくように”よほどのこと”を想像してみるなら、作品賞ノミネーションを受けたことが逆に票割れを生んでしまうこと、十分すぎる成功へのやっかみ(作品単体に対しても、ピクサーに対しても)、CGアニメに食傷気味な会員たちの敬遠……などが挙げられるが、どれも瑣末な不安に過ぎない。もし「カールじいさん」が受賞を逃すようなことがあるなら、漁夫の利的にオスカー像を手にするのは「コララインとボタンの魔女 3D」ということになるだろうが、その可能性は限りなく低いと言っていいだろう。
監督のピート・ドクターは「モンスターズ・インク」以来の同賞ノミネートとなるが、当時は宿敵ドリームワークスの「シュレック」に破れており、今回受賞なら初のオスカー像。学生時代の恩師に感謝の辞を述べた昨年のアンドリュー・スタントン(「WALL・E」)のように、ピクサー・スタッフは授賞式でのスピーチもひとひねり効いていて楽しいので、賞の行方よりもピート・ドクターの受賞スピーチを楽しみに待ちたい。
○ コララインとボタンの魔女 3D (監督:ヘンリー・セリック) 「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」監督による異質ファンタジー。少女が迷い込んだのは、目がボタンになっている魔女が住む世界だった。 |
Fantastic Mr.Fox (監督:ウェス・アンダーソン) ロアルド・ダール原作「すばらしき父さん狐」をストップモーション・アニメとして映像化。奇才ウェス・アンダーソンが風変わりな世界を構築する。 |
プリンセスと魔法のキス (監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ) 「アラジン」を手がけた監督コンビ新作。CGアニメ全盛の時代に2Dアニメーションが甦る。ディズニーの2Dアニメ作品は5年ぶりの登場になる。 |
The Secret of Kells (監督:トム・ムーア) 「ポニョ」を破って堂々の候補入りを果たしたフランス製アニメ。”Book of Kells”をバイキングの手から守ろうとする修道僧の少年の物語。 |
◎ カールじいさんの空飛ぶ家 (監督:ピート・ドクター) 北米だけで2億9000万ドル超を稼いだ大ヒットCGアニメ。亡き妻との約束を果たすため、カールじいさんが風船で浮かせた家で旅に出るが……。 |