[受賞最終予想] 外国語映画賞
カンヌ国際映画祭でパルムドールとグランプリを受賞した作品がそのままアカデミー賞で本命・対抗となる珍しい構図。どちらもヨーロッパの巨匠作品で知名度もあり、どちらが受賞してもおかしくない。カンヌではミヒャエル・ハネケ監督の「白いリボン」に軍配が上がったが、公式上映時にはブーイングも出たという問題作で、ハネケ監督らしい激しく好みの分かれる作品のよう。一方のジャック・オディアール監督「A Prophet」はカンヌの批評家たちの間では1番人気だったようで、作品の完成度では決してひけをとらない。
すでにアメリカでの公開も済んでいる「白いリボン」は、作品賞や監督賞部門でのノミネートも期待されたほどアメリカでの評価が高く、実際モノクロ映像ながら撮影賞にノミネートされるという快挙を成し遂げている。ヨーロッパでのそれ以上にアカデミー賞会員の間で人気が高いといってよさそうだ。前哨戦実績でも頭1つ抜け出しており、順当ならポール・トゥ・ウィンだ。
ただ、ここはやはり個人的に大好きなジャック・オディアール監督を応援。「リード・マイ・リップス」「真夜中のピアニスト」など、世の中から疎外された人たちの機微を描かせたら天下一品のオディアールが、疎外された者たちの集まりである刑務所を舞台に映画を撮るのだから、傑作にならないはずはない。キャリアではハネケに劣るオディアールだが、アカデミー賞受賞でその才能を広くアピールしたい。
他、注目はイスラエル代表の「Ajami」。イスラエル映画は昨年本命視されながら「おくりびと」に逆転を許した「戦場でワルツを」に続いて2年連続のノミネートとなる。アメリカでの評価もすこぶる高く、上位2作品で票が割れるようならアッと驚く伏兵の勝利もある。
余談だが、本命視される「白いリボン」の日本配給はツイン。同社は昨年「戦場でワルツを」も配給したが、惜しくも受賞を逃している。今年こそは下馬評通りにことが運んでほしいと願っているはずだが、果たして……。
Ajami(イスラエル) (監督:スカンダール・コプティ、ヤロン・シャニ) イスラエルの貧困街アジャミを舞台に展開する4つの物語。人種、宗教、貧富とあらゆる問題を抱えたイスラエルの現状がありのままに描かれる。イスラエル作品は2年連続のノミネート。 |
瞳の奥の秘密(アルゼンチン) (監督:ファン・ホセ・カンパネラ) 長年刑事裁判所に勤めた主人公が、アルゼンチンの闇の時代をテーマに小説を書くうちに、密かに愛した女性への思いにとらわれていく。スペイン映画祭2009で日本でも上映済み。 |
The Milk of Sorrow(ペルー) (監督:) 90年代初頭、ペルーのアンデス地方。1人のメイドの姿を通して、当時民衆を恐怖に陥れたテロリズムの悪を糾弾する。東京フィルメックス映画祭にて「悲しみのミルク」として上映。 |
◎ A Prophet(フランス) (監督:ジャック・オディアール) 6年の刑期を課せられた18歳の青年が、次第に刑務所内を掌握、さらには暗黒社会をも牛耳る存在にのし上がっていく。フランスの天才ジャック・オディアール監督最新作。 |
○ 白いリボン(ドイツ) (監督:ミヒャエル・ハネケ) 第一次大戦前夜のドイツを舞台に、ファシズムの予兆とも言える事件が描かれる。カンヌ国際映画祭パルムドールを受賞。モノクロ映像作品としては珍しく撮影賞にノミネートされている。 |