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【2010年全米ボックスオフィス回顧】 「アリス・イン・ワンダーランド」の功罪と「インセプション」の映画史に残る成功

TOY STORY 3

TW Title 配給 総興収 劇場数 公開
1 トイ・ストーリー3 BV
$415,004,880
4,028
6/8
2 アリス・イン・ワンダーランド BV
$334,191,110
3,739
3/5
3 アイアンマン2 Par.
$312,128,345
4,390
5/7
4 エクリプス/トワイライト・サーガ Sum.
$300,531,751
4,468
6/30
5 インセプション WB
$292,571,392
3,792
7/16
6 ハリー・ポッターと死の秘宝Part1 WB
$284,158,711
4,125
11/19
7 怪盗グルーの月泥棒 Uni.
$251,225,880
3,602
7/9
8 シュレック・フォーエバー P/DW
$238,395,990
4,386
5/21
9 ヒックとドラゴン P/DW
$217,581,231
4,060
3/26
10 ベスト・キッド Sony
$176,591,618
3,740
6/11

2010年、最も劇場に観客を集めた10本の映画を見てみると、いくつかの傾向が顕著に見られる。

・10本中4本がCGアニメ作品であること
・10本中5本が続編ムービーであること
・10本中5本が3D映画であること

「トイ・ストーリー3」のヒットは必然
今やこの3つの要素は映画をヒットさせる一番の近道で、つまり、続編でCGアニメで3D映画だった「トイ・ストーリー3」が年間TOPの興収をあげたのは必然だったと言える。同じ条件で公開された「シュレック・フォーエバー」も期待を大きく下回ったとはいえ、最終的に国内だけで2億3800万ドル、世界市場では7億ドル以上を売り上げる大ヒットを飛ばしており、やはりこの”三種の神器”の威力は驚異的だ。

「アリス・イン・ワンダーランド」の功罪
続編、アニメの強さはここ数年変わらず、しばらくこの傾向は変わらないだろう。ただし、3D映画の好景気は早くも収束傾向にあり、たとえば2010年11番目のヒット作品となった「タイタンの戦い」のようなエセ3D作品は自然と淘汰されていくことになるだろう。いわゆるポスプロ3Dの粗悪なクオリティーに、市場ははっきりとNOを突きつけている。ひどい3Dだった「アリス・イン・ワンダーランド」のヒットは、タイミングが全てだった。「アバター」が作り出した”本格3D時代突入”の波に乗り、あたかも「アバター」と同じ体験が出来ると観客に思わせた。その後のエセ3D作品乱発を生み出すきっかけを作った意味で、「アリス~」の功罪は大きい。

映画史に残る「インセプション」の成功
TOP10 中、唯一完全なオリジナル実写作品なのが「インセプション」だ。難解な脚本で決して一般受けするような作品でないにも関わらず、北米だけで2億9200万ドルを稼ぎ出した。資金回収の容易な続編映画にしか金を出さないハリウッド・メジャーが、1億6000万ドルもの巨費をこの映画に投入したのは、それだけで事件のようなもの。クリストファー・ノーラン監督が前作「ダークナイト」で5億3300万ドルもの興収をワーナーにもたらした功績の上に初めて実現した奇跡だ。ノーランがすごいのは、ともすれば作家の独りよがりに終わってもおかしくない企画を、しっかりと興行的成功に結びつけたこと。しかも、観客に寄り添うのではなく、観客に新たな映画の可能性を提示して、それを受け入れさせたことにある。2009年が「アバター」による3D元年であるとするなら、 2010年は「インセプション」による濃縮クオリティムービー元年だ。ノーランの作った波は今後必ず継承されていくだろう。そこにこそ映画の未来があると信じたい。


「怪盗グルー」大ヒットで激化するCGアニメ市場戦争
業界の開拓者であり絶対的な王者であるピクサーが「トイ・ストーリー3」でその存在感を見せつけた一方で、2番手を追走するドリームワークス・アニメーションも「シュレック・フォーエバー」「ヒックとドラゴン」「メガマインド」と作品を量産し、年間の売上げではピクサーを大きく上回った。これまではこの2強が 3Dアニメ市場をガッチリと独占してきたが、2010年、新たなプレイヤーが颯爽と市場に登場した。「怪盗グルーの月泥棒」を大ヒットさせたイルミネーション・エンターテインメント(配給はユニバーサル)だ。
「怪盗グルー~」をサマーシーズン興行に投入し、2億 5000万ドルを稼いでドリームワークス産の強力ライバルをなぎ倒すという強烈なデビューを飾ったイルミネーションは、敏腕プロデューサー、クリス・メレダンドリ率いる製作会社だ。メレダンドリはもともと業界3番手だった20世紀FOXアニメーションの代表をつとめており、在籍中に「アイス・エイジ」シリーズなどを大ヒットさせた功績を持つ。その天才プロデューサーが自身の製作会社を立ち上げ、ユニバーサルと配給契約を結び、2強が独占するCGアニメ市場に殴り込みをかけた。メレダンドリ・ブランドのCGアニメは今後も猛威を振るうこと確実で、2強もうかうかしていられない。もっとも、焦っているのは第 3勢力を狙う20世紀FOXやソニー・ピクチャーズ・アニメーションのほうかもしれないが。

2010年のサプライズヒット
2009 年暮れから続く「アバター」快進撃の余波から始まった2010年BoxOfficeだが、最初のサプライズヒットは「アバター」のV8を止めた意外な作品だった。ソニー・ピクチャーズ傘下の配給会社スクリーンジェムスが送り込んだ、制作費2500万ドルの小品「Dear John」が最初の週末だけで3000万ドルを稼ぎ、最終的に8000万ドル以上を売り上げる大ヒットとなった。
サマーシーズン興行では、それほど期待されていなかった2本の映画が予想外のヒット。リメイク作「ベスト・キッド」は、同じく80年代TVシリーズのリメイク「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」と同日に公開されたが、事前の予想ではライバルの引き立て役という評価だった。それがふたを開けてみれば最初の週末だけで5500万ドルを稼ぎ、ライバルに大勝した。
もはや映画ファンの間では嘲笑の対象でしかなくなってしまったM・ナイト・シャマラン監督の新作「エアベンダー」も、最初の週末に4000万ドルを稼いで周囲を驚かせた。映画の評判は相変わらず最悪だったが、興行的にはシリーズ化も十分の大成功。シャマランのキャリアも首の皮一枚つながった格好だ。
8月公開の「エクスペンダブルズ」も忘れてはいけない。 CG、3Dと映像技術がめまぐるしく進化する時代において、まるで時が止まったかのようなノスタルジィあふれる本格アクション・ムービーとして映画ファンのハートをがっちりキャッチ。最終的に1億ドルを超える大ヒットを記録した。更なる豪華キャストが集まる続編にも注目が集まる。
他、3D効果もあって前2作以上のヒットを記録した「ジャッカス3D」(1億1600万ドル)、ベン・アフレックが監督2作目で興行的にも成功をおさめた「ザ・タウン」(9200万ドル)らが目立った。

2010年の大コケ映画
ヒットメイカー、ジェリー・ブラッカイマーにとって2010年夏は屈辱にまみれたシーズンとなった。送り込んだ2本のアクション大作「魔法使いの弟子」、「プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂」がどちらも振るわず、ブラッカイマーブランドに大きな傷がついた。それぞれ9000万ドル、6300万ドルを稼いでいるのだから、普通なら合格点をあげられる数字なのだが、ブラッカイマー印となればそうはいかない。1億ドルが最低ノルマのブランドゆえ、2本とも失敗作の烙印を押されても仕方ない。

20世紀フォックスにとっても2010年は厳しい年になった。「アバター」のメガヒットで大いに潤ったが、その後リリースした新作がことごとく大コケ。夏の期待作「ナイト&デイ」、「特攻野郎Aチーム」がともに首位デビューすらかなわない体たらく。2010年に封切った作品で最も稼いだのが「デート&ナイト」の9800万ドルというから淋しい限り。ハリポタの二番煎じに終わった「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」、ディズニーから引き継いだ「ナルニア国物語:第3章」がそろってコケたとあっては目も当てられない。

他、前評判の高かった「Dinner for Schmucks」、「ツーリスト」はそれぞれ7300万ドル、5500万ドルと期待を裏切った。以下、1000館以上で公開されるも、全く稼げなかった映画上位5本。1位はチャン・ドンゴン主演のハリウッド映画。あろうことかジェフリー・ラッシュが出演してキャリアの汚点を作ってしまっている。

1. The Warrior’s Way (560万ドル/1,622館)
2. MacGruber (850万ドル/2,551館)
3. ジョナ・ヘックス (1060万ドル/2,825館)
4. 小さな命が呼ぶとき (1210万ドル/2,549館)
5. Let Me In (1210万ドル/2,042館)


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