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カンヌ最高賞「ツリー・オブ・ライフ」 オスカーの可能性

アカデミー賞 記事:2011.05.23

(C) 2010. Cottonwood Pictures, LLC. All rights reserved

昨夜発表されたカンヌ国際映画祭で、前評判の高さそのままに見事最高賞パルムドールを受賞した「ツリー・オブ・ライフ」。稀代の映画作家テレンス・マリックが描く親子二代に渡る壮大な家族の物語は、果たして本国のアカデミー賞で受け入れられるのか?

これまで64回の歴史を誇るカンヌ国際映画祭だが、その性質は”玄人受けするアート系映画を称賛する映画賞”を包み隠さずに体現しており、本来、映画ファンに向けた映画の祭典たらんとする米アカデミー賞とははっきりと趣を異にする。データにもそれは表れていて、過去64本のパルムドール受賞作品がアカデミー賞作品賞を受賞した例はたった2度しかなく、その2例もともに50年以上も前の出来事だ(46年「失われた週末」、55年「マーティ」)。しかも、ここ10年を遡ると、作品賞にノミネートされた作品も1作品(02年「戦場のピアニスト」)のみという結果となっている。近年、玄人受けする批評家賞向きの映画の台頭が目立つアカデミー賞ではあるが、やはりカンヌとの水と油の関係性には変化がないと言える。


ただし、作品賞ほか多部門でノミネートされ、受賞まで一息だった作品もある。93年の「ピアノ・レッスン」は、「シンドラーのリスト」に賞を譲ったものの、堂々8部門でノミネートされている。また、翌年の「パルプ・フィクション」も7部門で候補に挙がり、「フォレスト・ガンプ/一期一会」と最後まで賞を争った。

また、作品賞ノミネートまでで数えれば過去に14本の例があり、英語作品の受賞本数を母数とするとかなりの高確率と言える。ここ2本のアメリカ映画パルムドール受賞作(「華氏911」「エレファント」)はともにノミネートされていないが、作品の知名度・人気ともに高い「ツリー・オブ・ライフ」のノミネートは可能性が高いと言っていいだろう。

テレンス・マリック監督自身のアカデミー賞実績は、久々の復帰作となった「シン・レッド・ライン」の監督賞・脚色賞ノミネートのみという信じられない過小評価。とはいえ、手のひら返しの得意なアカデミーだけに、この伝説の映画作家に初のオスカー像を授与するシナリオは十分に予想できる。

作品賞、監督賞のほか、ブラッド・ピットの主演男優賞も有力。50年代アメリカの厳格な父親像を体現するピットの演技はカンヌでも評判だっただけに、ピットも3度目のノミネートで初戴冠があるかもしれない。ほか、エマニュエル・ルベツキの撮影賞も有力。過去4度の候補で受賞がまだなく、是非とも作品の勢いに乗りたいところ。昨年のアカデミー賞でも「英国王のスピーチ」でノミネートされながら受賞を逃したアレクサンドル・デスプラの作曲賞も期待できるだろう。

アカデミー賞戦線で大きく抜け出した「ツリー・オブ・ライフ」が、「マーティ」以来56年ぶりとなるパルムドール&アカデミー賞の両制覇を達成する確率は決して低くない。

「ツリー・オブ・ライフ」は2011年8月12日より丸の内ルーブルほかにて全国公開


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