[ノミネーション予想] 作品賞
今年から、作品賞ノミネーション数は5~10作品の間で流動的に決定されることになった。得票ポイント上位10作品の中から、第1位票が最低でも5%以上のものがノミネート資格を得ることになる。下位得票が多く上位10作品に入ったとしても、第1位に選んだ票が5%に満たなければノミネートされないということで、つまり突き抜けた魅力を持つ映画のみがノミネート資格を得るということだ。
ここがノミネート作品を予想する上でひとつの大きなポイントになるだろう。”いい映画だけど1位に選ぶほどではない”というような作品は予想の選から外すのが妥当だ。例えばジョージ・クルーニー監督の新作「スーパー・チューズデー 正義を売った日」はアメリカ製作者組合賞(以下PGA)にサプライズ候補となったが、この1位票5%をクリアできるかどうか。スピルバーグ監督の「戦火の馬」もいい映画だが、名監督のフィルモグラフィと比較して格別な傑作という評価を得るのは難しく、会員たちは1位票を投じるのを躊躇うかもしれない。ブロードキャスト映画批評家賞(以下BFCA)にノミネートされている「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」も同様だ。批評家からの支持をそれほど得られていない本作に1位票5%を期待するのは酷かもしれない。
逆に1位票を多く稼ぎそうなのがテレンス・マリック監督の「ツリー・オブ・ライフ」だ。賛否両論激しい作品で、1位か無視かという両極端な評価になりそう。PGAとGGで候補落ちしたのが気がかりだが、逆転候補は十分にありうる。
他、PGAでサプライズ候補となった「ドラゴン・タトゥーの女」も侮れない。こちらも好き嫌いのはっきり分かれる作品で、1位票の獲得はクリアできそう。PGA候補の余波でオスカー候補の可能性もある。ただし、同じソニー配給でより有力視されている「マネーボール」とのバッティングはマイナス要因か。
重要3賞すべてにノミネートされているのは、「アーティスト」「ファミリー・ツリー」「ヘルプ 心がつなぐストーリー」「ヒューゴの不思議な発明」「ミッドナイト・イン・パリ」「マネーボール」「戦火の馬」と7作品もある。この中から条件を問題なくクリアできそうなのは、「アーティスト」「ファミリー・ツリー」「ヒューゴの不思議な発明」あたりで、人種問題を扱った「ヘルプ 心がつなぐストーリー」、会員にファンの多いウディ・アレン作品「ミッドナイト・イン・パリ」あたりも可能性は高そうだ。おそらくこの5作品が上位争いを展開し、残る5つの席を何作品が獲得できるかが焦点となるだろう。
残る6~10番目の席を予想するのに重要なポイントとして、前哨戦での脚本賞と編集賞実績が挙げられる。この2部門は映画のクオリティを決定する重要な役割を担うだけに、作品賞部門での実績同様に重視すべきだ。まず脚本賞部門で実績上位なのは「マネーボール」。NY、ボストン、ラスベガスなどの批評家賞で受賞している。また、「50/50 フィフティ・フィフティ」も多くの批評家賞で受賞。作品賞部門ではそれほど有力視されていないが、サプライズ候補の可能性はある。
編集賞部門での実績上位は「ツリー・オブ・ライフ」と「ドライヴ」。どちらも複数の批評家賞で受賞している。前者は編集監督組合賞でもノミネートされているだけに、本番でも候補入りする可能性が高い。
あともう1本、逆転ノミネートの可能性があるとすれば、昨夏ボックスオフィスをにぎわせたコメディー「Bridesmaids」だろう。「宇宙人ポール」でも好演したクリステン・ウィグが脚本・主演を務め、脇役メリッサ・マッカーシーの怪演もあって大ヒットを記録。批評家からも高い評価を得た。プロデューサーはやはりこの人、ジャド・アパトゥということでクオリティも保証付き。コメディーに厳しいアカデミー賞ではあるが、健闘を期待したい。
ノミネート予想
「アーティスト」(ワインスタイン・カンパニー)
「ファミリー・ツリー」(フォックス・サーチライト)
「ヘルプ 心がつなぐストーリー」(ディズニー)
「ヒューゴの不思議な発明」(パラマウント)
「ミッドナイト・イン・パリ」(ソニー・ピクチャーズ・クラシックス)
「マネーボール」(ソニー・ピクチャーズ)
「ツリー・オブ・ライフ」(フォックス・サーチライト)