[受賞予想] 主演男優賞は2強対決!勝つのはどっち?
■ 主演男優賞
ジョージ・クルーニー (ファミリー・ツリー)
ジャン・デュジャルダン(アーティスト)
ブラッド・ピット(マネーボール)
デミアン・ビチル (A Better Life)
ゲイリー・オールドマン (裏切りのサーカス)
スタートでブラッド・ピット(マネーボール)が先頭に立つも、向こう正面でジョージ・クルーニー(ファミリー・ツリー)がこれを逆転。しかし最終コーナーにさしかかったところで、ジャン・デュジャルダン(アーティスト)が大外から一気に脚を伸ばしてきた。
競馬に例えるなら現在の状況はこんなところ。レースは3人の争いに絞られており、最終コーナーで2強のクルーニーとデュジャルダンが一歩も譲らぬ先頭争いを繰り広げている。
前哨戦ではクルーニーがBFCA(ブロードキャスト批評家賞)とGG賞を受賞するなど優位に立った。ほかの批評家賞も合わせた受賞数で言えばクルーニーがダントツだ。しかし、デュジャルダンは最大の前哨戦であるSAG(俳優組合賞)を受賞している。SAG受賞者はここ8年連続でオスカーを受賞しており、デュジャルダンには大きな追い風だ。ただし、クルーニーが受賞したBFCAはそれを上回る9年連続のオスカー受賞者を輩出しており、データ的にはまったく見劣りしない。
流れはデュジャルダン受賞に向きつつある。前哨戦終盤のGG賞、SAG、英国アカデミー賞を立て続けに受賞した勢いは本物だ。作品力も強く、配給のワインスタイン・カンパニーによる後押しも申し分ない。まだ受賞実績の少なかった前哨戦序盤から「第二のロベルト・ベニーニになる」という噂が囁かれたが、どうやら噂も現実味を帯びてきた。
やや劣勢のクルーニーだが、彼には多数のシンパがいる。俳優仲間に顔の広い兄貴分のクルーニーに投票する会員は多いだろう。仲間意識が働けば、ポッと出のフランス人にオスカー像を渡すまいとする心理が働くのは当然のことだ。ただし不安材料は、同じ”オーシャンズ”グループに属する同志ブラッド・ピットの存在だ。ピットも対象作「マネーボール」でキャリア最高の演技と評価され、初のオスカー受賞を期待されている。彼らのシンパによる票が少しでも2人に割れるようなら、強敵デュジャルダンを打ち負かすのは難しい。
終盤戦に勢いを失ったピットの逆転は正直かなり難しく、オスカー像をめぐる争いは実質2人に絞られた。演技、役柄ともに差はなく、どちらが受賞してもおかしくない状況だ。クルーニーは「シリアナ」ですでに助演男優賞を受賞しており、今年は「スーパー・チューズデー 正義を売った日」でも脚色賞にノミネートされている。キャリアはこの先も順風満帆で、ここでオスカーを受賞しなくてもいくらでもチャンスがある。そう会員に思わせてしまうポテンシャルの高さが、メリル・ストリープとかぶる。毎年ノミネートされながら受賞から遠ざかっているストリープのような存在になりそうな気配もあり、今年がその分かれ道のような気がする。何もかも持っている男がオスカー像も大量受賞……では逆にファンを減らしかねない(?)。クルーニーは余裕たっぷりの笑顔で後進に道を譲るのが似合っている。
◎ ジャン・デュジャルダン(アーティスト)