懐古主義の裏に隠された本当の映画愛 「アーティスト」レビュー
CG全盛の21世紀映画時代にモノクロのサイレント映画。これを仕掛けたのが40代そこそこのフランス人と知って、奇を衒っただけの、若手監督の野心がギラギラした作品かと心配した。
カンヌで激賞され、米アカデミー賞でも認められたのは、こうしたひねくれた先入観を吹き飛ばすほどのピュアな映画愛にあふれているからだろう。
実際、ミシェル・アザナヴィシウス監督がこの映画の制作する過程には、技術志向の強い昨今の映画界に対するアンチテーゼが少なからず頭にあったに違いなく、その野心を消臭することが映画の成功を左右する鍵だった。