映画はスターを愛でるもの — 「ジョン・カーター」レビュー
この映画を観ると、映画製作の難しさをあらためて思い知らされる。
ピクサー映画で観客の心を掴む術を習熟しつくしてきたはずの監督が実写映画製作のエキスパートたちをスタッフに招集し、SFの起源とされる傑作小説を不自由ない予算でありったけの想像力を注ぎ込んで映像化。その結果がこんな残念なシロモノに仕上がるなんて、想像力豊かなアンドリュー・スタントンもさすがに思いもよらなかっただろう。
スタントンの作り出したバルスームの造形は見事だ。創造しつくされた感のあるSF映画クリエイティブにあって、オリジナルと呼べる個性を発揮している。スタントンの想像力を支える映像技術も申し分ないクオリティで、火星への旅をリアルに見せてくれる。