2人の天才ドライバーによる超絶テクニック映画 ― 「ラッシュ プライドと友情」レビュー
感性のハントか、テクニックのラウダか。
1976年のF1チャンピオンを争った2人のプライドと友情を描く熱い熱いドラマは、唸る轟音とスピードに任せた感性の映画のようでありながら、その実、クレバーな計算に裏付けされた確かなテクニックによって成り立っている。
死と隣り合せの反動から生の喜びを貪る男、ジェームズ・ハント。野生の本能と駄々っ子のような奔放さをさらけ出す彼は、対照的に冷静沈着で計算高いライバル、ニキ・ラウダを「ネズミ野郎」と挑発する。対するラウダもつねに周囲に笑いが渦巻くハントをつかまえて「軽く見られている証拠だ」とやり返す。この2人の間に芽生えたライバル心、そして後に発展する友情には何の計算もなかっただろう。明日をも知れぬ2人が本能のおもむくままに相手と対峙し、戦った軌跡がそこにある。
それがどうだ。名脚本家ピーター・モーガンの筆致は、まるで、対をなす2人の出自や気性、そしてハントが見舞われる挫折やラウダの大事故にいたるまで、すべてがあらかじめキャンバスに描かれた設計図の一部であったかのようにドラマチックに彩ってしまう。