個性を脇に追いやる勇気を ― 「ムード・インディゴ うたかたの日々」レビュー
ケミカル・ブラザーズ、ダフトパンク、ホワイト・ストライプスなど有名アーティストのミュージックビデオで頭角を現したミシェル・ゴンドリーは、もともと3分間くらいのレンジでその手腕を発揮するウルトラマン監督なのだろう。技術ではなく工夫によって生み出される彼の映像はマジックのようで楽しいが、その享楽はとても2時間持続するものではない。
映画監督としてのデビュー当時こそチャーリー・カウフマンという異色ストーリーテラーのサポート的な立場で彼の映像センスが引き立ったが、カウフマン脚本から巣立った後のゴンドリーは、もはや物語を語るのも面倒だと言わんばかりに趣味への傾倒を隠さず、その結果、尖った映像だけが先走るキテレツ映画のイメージが根付いてしまった。