しょうもない最後の台詞がすべてを語る ― 「ザ・マスター」レビュー
※このレビューにはネタバレが含まれています。
いきなりケジラミを退治する方法を説く主人公の姿から始まるときた。「容疑者ホアキン・フェニックス」から何十キロ減量したんだと驚く痩身のホアキンが、苦渋に満ちたような、それでいていたずらっぽい笑みを浮かべながら「タマに火をつけるんだ」と得意げにのたまう。かと思えば、浜辺に砂で作った女体に覆い被さって盛んに腰を振る。
第二次大戦後の50年代を舞台に、戦争のトラウマで精神に異常を来した男と、彼を立ち直らせようとするマスターの関係が描かれる。男が作ったあやしげな酒をうれしそうにあおり、人心掌握に長けたカリスマが次第に男を虜にしていく。だが一方で、生来の欲望と衝動を抑えられない男はマスターの意に反した行動を繰り返し、やがて彼と袂を分かつ。