【第86回アカデミー賞最終予想】 美しいドラッグクィーンを演じたジャレッド・レト(ダラス・バイヤーズクラブ)が助演男優賞大本命
ベテランの老優にやさしい傾向がある部門だが、今年は若い候補者たちがそろった。
もっとも早い生まれのジャレッド・レト(ダラス・バイヤーズクラブ)ですらまだ42歳。最年少のバーカッド・アブディは20代の若さだ。
前哨戦を独走したのは最年長のジャレッド・レト。最重要前哨戦たる俳優組合賞 (SAG)、ゴールデン・グローブ賞、ブロードキャスト批評家賞のすべてを総な めしており、盤石の構えだ。この独走に待ったをかけるのはタレント揃いの他ノミニーでも困難だろう。ただし、スキがないわけではない。もともと俳優業のほ かにミュージシャンとしての顔を持つレトは、09年の「ミスター・ノーバディ」を最後に俳優業を一時休業。インタビューで“俳優業なんて監督のいいなりで やってらんねえよ”というコメントも残している。また、私生活でのプレイボーイぶりも有名で、最近もマイリー・サイラスと浮き名を流したかと思えば、助演 女優賞にノミネートされているケニア人女優ルピタ・ニョンゴとの密会を噂されたりもしている。この自由人に俳優仲間たちが素直に票を投じるかどうか。
対抗馬と目されるマイケル・ファスベンダー(それでも夜は明ける)は、今もっとも旬な俳 優のひとり。これがオスカー初ノミネートという事実が信じられないほどのキャリアをすでに築いており、36歳にして早くも唯一無二の存在感を発揮してい る。今回は自身のブレークのきっかけにもなった「Hunger」のスティーヴ・マックィーン監督との再コンビということで息もぴったり。奴隷制という人間 の暗部を一身に背負った役を憎々しげに熱演している。この部門は魅力的な悪役に賞が授与されることも多く、「許されざる者」のジーン・ハックマンを筆頭 に、「ダークナイト」のヒース・レジャー、「ノーカントリー」のハヴィエル・バルデム、「イングロリアス・バスターズ」のクリストフ・ヴァルツなど、その 人物が魅力的でありさえすれば、劇中の行動の善し悪しは問われない傾向にある。ただ、同じ悪役と言っても例にあげた愛嬌のある彼らとは違い、ファスベン ダーが演じるのは自身の持つ暗い闇が表面化するおよそ魅力的とは言えない人物。役柄を毛嫌いする層からは票を得られないかもしれない。
個人的にもっとも受賞にふさわしいと思うのは、ブラッドリー・ クーパー(アメリカン・ハッスル)だ。 主演格4人のなかでもっともハッスルした演技を見せるのが彼で、複雑な役柄も相まって実に魅力的に映る。昨年も「世界にひとつのプレイブック」で受賞にふ さわしい熱演を見せており、2本分の評価で合わせ技一本という結果もあり得る。レトから票が逃げた場合はクーパーが漁夫の利を得ることになりそうだ。
最終予想
◎ ジャレッド・レト(ダラス・バイヤーズクラブ)
○ ブラッドリー・クーパー(アメリカン・ハッスル)