パジーリャの個性を最先端技術がスポイルする ― 「ロボコップ」レビュー
黒光りするボディデザインを見て、「こんなのロボコップじゃない!」とハネつけるのは早計だ。実はこの黒いロボコップは、ラストのカタルシスを誘導するための腹黒い演出にすぎない。作り手ははなから黒いロボコップがかっこいいなんて思っちゃいない。人を食った、しかし野心あふれる大胆さだ。
監督のジョゼ・パジーリャは母国ブラジルで体制批判のメッセージも過激な反骨映画を手がけてきたが、異国の地にもちゃんとその精神を持ち込んでいる。黒いロボコップという仕掛けもらしいアプローチだが、パジーリャの個性がもっとも反映されているのがサミュエル・L・ジャクソン演じるTV司会者ノヴァクのキャラクターだ。
冒頭、MGMロゴで咆哮するライオンの口の動きに合わせ、「プルルルルルル」とふざけたような異音が重なる。実はこれ、ノヴァクの発声練習だったというオチなのだが、のっけから老舗スタジオの看板を茶化す肝の太さを見せ付ける。