【第87回アカデミー賞予想 主演女優賞】ジュリアン・ムーアが5度目のノミネートで初の戴冠に王手
■主演女優賞ノミニーと過去のアカデミー賞実績
フェリシティ・ジョーンズ(博士と彼女のセオリー)
⇒アカデミー賞実績
なし
ジュリアン・ムーア(アリスのままで)
⇒アカデミー賞実績
03年「エデンより彼方に」(主演女優賞ノミネート)
03年「めぐりあう時間たち」(助演女優賞ノミネート)
00年「ことの終わり」(主演女優賞ノミネート)
98年「ブギーナイツ」(助演女優賞ノミネート)
ロザムンド・パイク(ゴーン・ガール)
⇒アカデミー賞実績
なし
リース・ウィザースプーン(Wild)
⇒アカデミー賞実績
06年「ウォーク・ザ・ライン 君につづく道」(主演女優賞受賞)
マリオン・コティヤール(サンドラの週末)
⇒アカデミー賞実績
08年「エディット・ピアフ 〜愛の賛歌〜」(主演女優賞受賞)
【解説】
かなり早い段階から、今年はジュリアン・ムーア(アリスのままで)の年になるだろうという声が聞かれていたが、どうやらその予測に間違いはなかったようだ。ムーアは昨年のカンヌ国際映画祭に出品された「マップ・トゥ・ザ・スターズ」で女優賞を受賞したが、その「マップ〜」は全米公開が今年2月に延期され、アカデミー賞対象外となる不測の事態。しかし、もう一本の出演作「アリスのままで」で演じた若年性アルツハイマーに悩む母親役がこれまた名演で、「マップ〜」の下馬評を引き継ぐようにしてオスカーフロントランナーの地位を守り抜いた。アカデミー賞は今回が5度目のノミネートで、まだ受賞していないのがおかしいほどの実績の持ち主。対象作の認知度が低いのが気がかりだが、よほどのことがないかぎり受賞を逃すことはないだろう。
前哨戦でそのムーアと遜色ない戦いを繰り広げたのがロザムンド・パイク(ゴーン・ガール)とマリオン・コティヤール(サンドラの週末)。受賞数だけを振り返ればこの三者はいずれも互角で、例年ならばそれぞれに受賞のチャンスがあると分析できる。
ロザムンド・パイクは何よりも対象作の人気が強みだ。その「ゴーン・ガール」は作品賞ほか多部門でのノミネートを有力視されながらまさかのシャットアウト。アカデミー会員の多数を占める老齢者たちが強い拒否反応を示したようにも見えるが、さすがに彼女の熱演だけは認めざるをえなかったようだ。これまでのキャリアはどちらかというとその美貌だけがクローズアップされてきたフシがあるが、名手デヴィッド・フィンチャーの導きによって演技派として開花。一世一代の当たり役でオスカー受賞を狙う。
マリオン・コティヤールは出世作となった「エディット・ピアフ 愛の賛歌」ですでに主演女優賞受賞の実績がある。今回の対象作「サンドラの週末」は外国語作品ながら、コティヤールの知名度と卓抜な演技力でハンデを覆してのノミネートとなった。オスカー受賞後はハリウッドでの活躍もめざましく、アメリカですっかり一流女優としての地位を確立。今回は受賞できなくても、今後2つ目のオスカー像にも手が届きそうな存在だ。
同じく主演女優賞受賞の実績を持つリース・ウィザースプーン(Wild)。05年に「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でオスカー受賞後はしばしキャリアが停滞したが、昨年は対象作のほかにも「インヒアレント・ヴァイス」に出演。また、大ヒット作「ゴーン・ガール」にはプロデューサーとして参加するなど大当たりの年だった。すでに受賞経験があるだけに票は集めづらいだろうが、昨年「ダラス・バイヤーズクラブ」で2人の男優にオスカー像をもたらしたジャン=マルク・ヴァレ監督の演出で2度目のオスカー像をさらう可能性はある。
今回のノミニー中最年少となる31歳のフェリシティ・ジョーンズ(博士と彼女のセオリー)は、11年のサンダンス映画祭で話題になった恋愛映画「今日、キミに会えたら」でブレークしたイギリス人女優。この映画で数々の新人賞を受賞して注目を集めた。今回の対象作「博士と彼女のセオリー」では、全身の自由を奪われた夫を健気に介抱しつつ、自らが抱えるジレンマに苦しむ難役を堂々と演じきった。主演男優部門では共演のエディ・レッドメインが有力視されているが、彼女とのケミストリーが質を高める結果になっているのは明らか。いきなりの受賞があってもおかしくない。
【予想】
◎ジュリアン・ムーア(アリスのままで)
○フェリシティ・ジョーンズ(博士と彼女のセオリー)
△ロザムンド・パイク(ゴーン・ガール)