【第87回アカデミー賞結果発表】 「バードマン」が作品賞ほか4部門受賞で勝者に!
第87回アカデミー賞結果一覧
史上まれに見る大混戦と言われていた第87回アカデミー賞だが、終わってみれば「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」が作品・監督・脚本・撮影の4部門を受賞して、ライバル「6才のボクが、大人にまるまで」を圧倒した。
「バードマン」はハリウッドを半ば風刺する内容ながら、主に業界内での支持を集めたことが今宵の勝利につながった。これはメキシコ人監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが、本作を単なる風刺劇ではなく、物事を表現する仕事に従事するすべての人々に対する賛歌に仕上げていたことが愛された理由だったのかもしれない。ともかく、すべてをワンカットで見せきる卓抜な撮影手法から、ライブ感がハンパない入魂の演技、そして表現者たちの深い嘆きや喜びをすくいとった脚本など、すべてが規格外の野心作だっただけに、この映画がアカデミー賞を受賞したことの理由と意義を後日あらためてかみしめたい。
助演女優賞のみの受賞に終わった「6才のボクが、大人になるまで。」は、一方でアカデミー賞の投票システムの不備を物語っていたようにも見える。7月に全米公開された当時の驚くまでの熱量を最後まで維持できなかったのが敗因だろう。10月公開の「バードマン」よりも明らかに不利だった。また、配給会社のキャンペーン力にも大きな差があった。「6才のボク〜」を配給するIFCフィルムズは小さな独立系配給会社で、アカデミー賞キャンペーンにも不慣れ。対して「バードマン」を配給するFOXサーチライトは同じ独立系とはいえ、これまでにアカデミー賞受賞作を多数輩出してきた“アカデミー賞のプロ”。接戦の明暗を分けたのは、作品のクオリティや人気とは離れたところに理由があるのかもしれない。
作品賞こそ逃したが、ノミネートされた5部門中3部門で受賞した「セッション」は大きな勝利を手にしたと評価していいだろう。本命視されたいたJ・K・シモンズの助演男優賞にとどまらず、授賞式のしょっぱなに発表された録音賞も受賞。さらに最も評価に値するのが、作品賞とセットで語られることも多い編集賞を受賞したことだ。この部門の受賞作品には名作が多く、ともすれば作品賞受賞作に次ぐ評価を勝ちとったと言っても過言ではない。
「グランド・ブダペスト・ホテル」は主要部門では惜しくも賞を逃したが、下馬評通り技術賞部門で気を吐いた。美術・衣装・メーキャップ・作曲の4部門を受賞。アレクサンドル・デスプラは7度目のノミネートで初受賞となった。
ボックスオフィスでの大ヒットで注目された「アメリカン・スナイパー」は音響編集賞の一冠のみに終わった。直前の勢いはナンバーワンと言われていただけに、この低評価は意外と言うべきか。
日本人注目の部門、長編アニメーション映画賞の勝者は「ベイマックス」。併映の「愛犬とごちそう」が短編アニメーション映画賞をW受賞し、ディズニーの勢いを見せつけた。高畑勲監督の「かぐや姫の物語」と堤大介監督の「ダム・キーパー」は残念ながら受賞ならず。強大なスタジオの威力に飲み込まれたかたちとなってしまった。