【第89回アカデミー賞最終予想】視覚効果賞、録音賞、音響編集賞
■視覚効果
○クレイグ・ハマック、ジェイソン・H・シュネル他（バーニング・オーシャン）
▲ステファン・セレッティ、リチャード・ブラフ他（ドクター・ストレンジ）
◎ロベルト・レガート、アダム・ヴァルデス他（ジャングル・ブック）
スティーヴ・エマーソン、オリヴァー・ジョーンズ他（Kubo and the Two Strings）
ジョン・ノール、モーヘン・レオ他（ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー）
近年の同部門の傾向は、昨年の「エクス・マキナ」受賞に顕著に表れている。技術賞部門を総なめにした「マッドマックス 怒りのデス・ロード」および史上No.1ヒット作「スター・ウォーズ／フォースの覚醒」を差し置いての受賞は昨年最大のサプライズとされた。ノミネート5作品中もっとも低予算で作られた小品の受賞はたしかに驚きだったが、近年の傾向からすれば決して予想できない結果ではなかった。
その傾向というのは、「現実世界をベースとした進化」。近年の受賞作は「インターステラー」「ゼロ・グラビティ」「ライフ・オブ・パイ」「ヒューゴの不思議な発明」「インセプション」など。ゴリゴリのSF作品は明らかに敬遠され、むしろ現実世界に軸足を置きつつも視覚効果が不可欠な存在感を放っている映画が受け入れられている。つまり、画面全体を視覚効果が覆うのではなく、なくてはならない場面のみ活躍するような作品だ。
その傾向からすると、真っ先に「ローグ・ワン／スター・ウォーズ・ストーリー」は除外される。過去一度も受賞実績のないディズニー・マーベル作品である「ドクター・ストレンジ」も厳しい戦いとなりそうだ。アニメ作品「Kubo and the Two Strings」はノミネート自体が快挙。もし受賞すれば昨年以上のサプライズとなる。
というわけで残る「バーニング・オーシャン」と「ジャングル・ブック」の対決になると予想する。これまでの傾向からすると前者が優位に思えるが、CG技術を全面にアピールして新たな世界を作り上げてしまった「ジャングル・ブック」のインパクトが勝るか。ボックスオフィスでの大ヒットも受賞を後押しするだろう。
【第89回アカデミー賞予想】
■録音賞
ベルナルド・ギャレピ・ストロブル、クロード・ラ・ヘイ（メッセージ）
○ケヴィン・オコネル、アンディ・ライト他（ハクソー・リッジ）
◎アンディ・ネルソン、アイ・リン・リー他（ラ・ラ・ランド）
デヴィッド・パーカー、クリストファー・スカラボシオ（ローグ・ワン スター・ウォーズ・ストーリー）
▲グレッグ・P・ラッセル、ゲイリー・サマーズ他（13時間 ベンガジの秘密の兵士）
■音響編集賞
シルヴェイン・ヴェルメア（メッセージ）
ワイリー・ステートマン、レネー・トンデリ（バーニング・オーシャン）
◎ロバート・マッケンジー、アンディ・ライト（ハクソー・リッジ）
○アイ・リン・リー、ミルドレッド・ラトロウ（ラ・ラ・ランド）
▲アラン・ロバート・マーレイ、バブ・アスマン（ハドソン川の奇跡）
過去10年、録音賞と音響編集賞の結果が一致したのは6回。基本的には両賞をセットで受賞する確率が高い。受賞作品の傾向としては、昨年両賞を受賞した「マッドマックス 怒りのデス・ロード」や「ゼロ・グラビティ」など、作品賞部門でも有力視されているスケールの大きな作品が受賞する確率が高い。今年で言えば、「ラ・ラ・ランド」「ハクソー・リッジ」がこれに当たる。このどちらかが両賞をダブル受賞する確率が高そうだが、もうひとつの気になるデータは、過去10年で両賞の結果が一致しなかった場合の傾向だ。結果が一致しなかった4回のうち、3本は「セッション」「レ・ミゼラブル」「ドリームガールズ」とミュージカル映画あるいは音楽を主題とした映画が関係している。具体的には、その3本とも録音賞のみ受賞という結果で、撮影現場でのライブサウンドで映画が生きるような作品は同賞を受賞しやすいということなのだろう。
というわけで、録音賞部門に関しては「ラ・ラ・ランド」の圧倒的優位は揺るがないだろう。一方、音響編集賞部門ではミュージカル映画よりも戦争映画の方が実績を残しており、「ハクソー・リッジ」優位と言えそうだ。
