【第89回アカデミー賞最終予想】撮影賞、編集賞
■撮影賞
○ブラッドフォード・ヤング(メッセージ)
◎ライナス・サンドグレン(ラ・ラ・ランド)
グレイグ・フレイザー(LION/ライオン 25年目のただいま)
ジェームズ・ラクストン(ムーンライト)
▲ロドリゴ・プリエト(沈黙 -サイレンス-)
ここ3年続いたエマニュエル・ルベツキ独占期がようやく終わりを告げ、今年は新しい風が吹いている。昨年はルベツキの他にもロジャー・ディーキンス、ロバート・リチャードソン、ジョン・シールと、ノミネート回数を足したら膨大な数になるような大御所ばかりだったが、今年は5人合わせてノミネート実績が1回という実にフレッシュな面々が顔を揃えた。
その1回だけのノミネート実績を誇るのが「沈黙」のロドリゴ・プリエトだ。高い評価を得ながらもアカデミーからは無視されるかたちとなった「沈黙」だが、プリエトの美しい撮影だけはさすがに認めざるを得なかったというところか。
ただし、この部門の本命もやはり「ラ・ラ・ランド」だ。撮影を担当したライナス・サンドグレンはオスカー候補実績こそないものの、過去には「アメリカン・ハッスル」などのデヴィッド・O・ラッセル監督作を手がけている若手有望株。作品人気を追い風に初ノミネートでのオスカー受賞があってもおかしくない。
今回、黒人として史上はじめて撮影賞部門でのノミネートを勝ち取ったブラッドフォード・ヤング(メッセージ)にも要注目。「グローリー/明日への行進」「アメリカン・ドリーマー/理想の代償」など話題作を次々手がけ、次回作では若きハン・ソロの活躍を描く「スター・ウォーズ」スピンオフの撮影を手がけることが決まっている。
■編集賞
ジョー・ウォーカー(メッセージ)
▲ジョン・ギルバート(ハクソー・リッジ)
ジェイク・ロバーツ(最後の追跡)
◎トム・クロス(ラ・ラ・ランド)
○ジョイ・マクミロン、ナット・サンダース(ムーンライト)
デヴィッド・フィンチャー作品「ソーシャル・ネットワーク」「ドラゴン・タトゥーの女」が同部門を2年連続で制したように、カットを細かくつなぐ技巧的な編集が近年のトレンドとなっている。かつては作品賞とセットで語られることも多かった部門だが、ここ3年続けて受賞作は分かれており、過去10年で見ても一致は4本とむしろ一致率は低い。
とはいえ、今年は作品賞部門でも受賞を期待される「ラ・ラ・ランド」が編集賞も制することになるだろう。2年前に「セッション」で同部門を制したトム・クロスが2つ目のオスカー像をかっさらう公算が高い。逆転があるとすれば「ムーンライト」。作品賞部門では「ラ・ラ・ランド」の対抗馬と目されているが、各部門で猛威を振るいそうなライバルに比べると明らかに劣勢。なんとかこの部門を制してライバルに食らいつきたいところだ。