【第89回アカデミー賞最終予想】長編アニメーション映画賞
【長編アニメーション映画賞】 2本エントリーのディズニーが5年連続の戴冠に王手。ジブリの「レッドタートル」には厳しい戦い。
○Kubo and the Two Strings
▲モアナと伝説の海
My Life as a Zucchini
レッドタートル ある島の物語
◎ズートピア
マスコミは日本からエントリーの「レッドタートル ある島の物語」に話題をフォーカス。スタジオジブリは堂々の4年連続ノミネートとなるが、宮崎駿(風立ちぬ)、高畑勲(かぐや姫の物語)の両巨匠も受賞は叶わず。今回は例年に増してライバルが強力で、残念ながら受賞のチャンスは皆無に等しい。
受賞の最右翼はアニー賞受賞など前哨戦をリードした「ズートピア」。ディズニー製アニメはここ4年連続で長編アニメ賞を制する無双ぶりで、ボックスオフィスでの王者ぶりもふくめ手がつけられない状態だ。ひとくちにディズニー製アニメと言っても、厳密にはディズニー・アニメーション・スタジオによって製作された作品と、ピクサーによって製作された作品の大きく2種類に分類され、その同窓対決の行方も興味深い。4年前と昨年がピクサーの「メリダとおそろしの森」と「インサイド・ヘッド」、3年前と一昨年がディズニー・アニメーション・スタジオの「アナと雪の女王」と「ベイマックス」がそれぞれこの部門の王者となっている。今年はディズニー・アニメーション・スタジオの「ズートピア」と「モアナと伝説の海」が2本エントリーし、ピクサーの「ファインディング・ドリー」が落選するという結果になったが、ボックスオフィスでは「〜ドリー」が大きく上回り貫禄を見せつけている。まさに実力伯仲。
というわけで、今年もディズニーの牙城が崩れることはなさそうだ。気難しい批評家筋すら感心させた「ズートピア」は付け入る隙がない。紛れがあるとすれば、それは同窓「モアナ〜」ではなく、まったく違う道を歩むアニメーション制作会社ライカの「Kubo and the Two Strings」だろう。「ティム・バートンのコープスブライド」「コララインとボタンの魔女」など特徴のある作風で知られるライカの新作は、視覚効果賞にもノミネートされるなど高い評価を獲得している。ただ、興行的には過去のライカ作品の中ではもっとも低く、認知の面で大きく劣っていることは否めない。
スイス製アニメ「My Life as a Zucchini」も一発逆転の魅力を秘める。外国語映画賞部門にもスイス代表としてエントリーしていたほどで、カンヌ国際映画祭にも出品して高く評価されている。ただし、この部門の過去受賞作15本のうち、外国語作品の受賞は宮崎駿監督「千と千尋の神隠し」のみ。高いハードルであることに間違いない。