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【第89回アカデミー賞最終予想】外国語映画賞

アカデミー賞 記事:2017.02.25

【外国語映画賞】 巨匠アスガー・ファルハディ監督「セールスマン」(イラン)とカンヌで話題騒然の「ありがとう、トニ・エルドマン」(ドイツ)ががっぷり四つ。

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ヒトラーの忘れもの(デンマーク)
幸せなひとりぼっち(スウェーデン)
○ありがとう、トニ・エルドマン(ドイツ)
▲タンナ(オーストラリア)
◎セールスマン(イラン)

今年も優れた外国語映画が顔を揃えたが、残念ながら、世間的にはまったく違う角度からこの部門がクローズアップされている。今年1月に就任するや横暴な大統領令を乱発しているドナルド・トランプ米大統領が移民政策の見直しとして実施した、中東・アフリカ7カ国から米国への入国制限。その対象となっているイランから外国語映画賞にノミネートされた「セールスマン」は、過去に同部門を受賞した実績を持つ巨匠アスガー・ファルハディ監督の新作だ。監督と主演女優のタラネ・アリドゥスティはトランプ大統領の下した措置に対して公然と抗議し、授賞式の欠席を表明している。

このようなことが受賞結果を左右するべきではないが、アカデミー会員たちの中にはトランプ政権への反感、あるいは今回の措置に対する異議の表明として「セールスマン」に投票する者もいあるかもしれない。もし「セールスマン」の名前が呼ばれて監督および主演女優の代理となる人間が壇上に立ったとしたら、今回の件への言及は避けられないだろう。華やかな授賞式に暗い影を落とす瞬間は間違いなくやってくる。

これを書いている時点で筆者はまだ作品を未見だが、過去のアスガー・ファルハディ作品はほぼ鑑賞しており、特に「彼女が消えた浜辺」「別離」「ある過去の行方」はいずれも大傑作と認識している。現役監督の中では5本の指に入るほど大好きな監督だで、当然、「セールスマン」にも大きな期待を抱いている。投票するアカデミー会員も純粋に作品に対する評価を反映しているに違いなく、みごと受賞が叶った時、政治的な要素が影響したと書き立てるメディアがいたとしたら、本当に残念なことだ。

ただ、今年は本当にユニークな作品が多く、どの作品が受賞してもおかしくない混戦だ。カンヌ国際映画祭で上映されるや大評判を呼んだドイツ映画「ありがとう、トニ・エルドマン」は、父娘の関係を独特のユーモアで描いたドラマ。前哨戦でも「セールスマン」と互角の戦いを繰り広げており、下馬評では二強の一角と目されている。
また、日本でも公開されたスウェーデン映画「幸せなひとりぼっち」は、メイクアップ&ヘアスタイリング賞にもノミネートされるなど総合的に評価が高い。気難しい老人の晩年を描いた感動ドラマで、万人が楽しめる作りになっている。
「タンナ」はオーストラリア映画として初めて同部門にノミネートされる快挙。南太平洋にあるバヌアツ共和国で史上初めて全編の撮影が行われた作品で、部族間の争いで引き裂かれる若い恋人たちの悲劇を描く。
外国語映画賞ではとくにナチスドイツによる悲劇を描いた作品が受けやすく、その傾向からすればデンマーク映画「ヒトラーの忘れもの」にもチャンスがある。

下馬評通りなら「セールスマン」もしくは「ありがとう、トニ・エルドマン」のどちらかが栄冠に輝くだろう。どの作品が受賞するにしても、そこには政治的な要素のかけらも存在していないと信じたい。


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