【第89回アカデミー賞最終予想】長編ドキュメンタリー映画賞
【長編ドキュメンタリー賞】7時間47分の大長編か、衝撃的な奴隷制継続の告発か、ベルリン金熊賞受賞の問題作か?
◎13th -憲法修正第13条-
I Am Not Your Negro
○O.J.: Made in America
▲海は燃えている イタリア最南端の小さな島
ぼくと魔法の言葉たち
下馬評で本命視されているのは、アメフト界のスーパースターでありながら妻殺しの嫌疑を受けたO・J・シンプソンの半生に迫るドキュメンタリー「O.J.: Made in America」。なんと7時間47分にもわたる大長編。これはアカデミー賞にノミネートされた映画としては史上最長となる。アメリカでもっとも人気のあるスポーツが生んだ大スターの誰もが知る衝撃的な未解決事件の真相に迫る内容だけに、アカデミー会員の関心も高いに違いない。
注目はNetflix配給の社会派ドキュメンタリー「13th -憲法修正第13条-」。「グローリー・明日への行進」で高評価された女流監督エヴァ・デュヴァネイが現代も続く黒人たちへの差別について描く内容で、リンカーン大統領が奴隷解放を成し遂げたその後も、形を変えて黒人たちへの支配は続いているという衝撃的な告発となっている。その衝撃度からも逆転があっておかしくない。
ベルリン国際映画祭で最高賞・金熊賞を受賞した「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」も有力候補の一角。アフリカ大陸からの過酷な密航の事実が描かれる一方で、その密航船が多数漂着するイタリア最南端の島の日常が淡々と描かれる。まったく違う境遇の人間たちが交わるその島を舞台に両者の思いを並行して描くことで見えてくるものとはー。
前哨戦で抜きん出た実績を持つ作品はなく、どの作品が受賞してもおかしくない大混戦だ。